強い雨が二人に打ちつける。緑色の軍服も見る間に濃く色が変わり、金の髪も濡れて顔に雨が流れ落ちる。
何度も重ねる唇の合間に雨が伝ってその味さえ二人で分け合いながら、それでもどちらともやめようともしないで、ただ熱を、想いを伝えるためだけに、相手を求めてキスを交わす。
銀の髪は重く頬に貼り付いて、滝のように雨が流れる。
恋人はそれを耳にかけると頤に手を添えて上向かせた。そして一瞬、唇を離し、慈しむようにそっと優しい口付けをする。それに緩く目蓋をあげて雨の隙間で蒼い眼がディアッカを見上げた。アメジストの眸は優しくいつもの色を宿し、言葉よりも確かに相手に想いが伝わったことを教える。柔らかく微笑んだ褐色の肌の青年は骨ばった手で白皙の額から雨を払うとそっと唇を落とす。そして力一杯細い体を抱きしめると、もう一度雨に赤く濡れた唇を自分のそれで塞いだ。背中に回った白い軍服が重い袖ごと緑の軍服をかき抱く。
雨の音しかしないその場所で、二人の耳にはそれさえ届いていない。
ただ、相手の鼓動が、濡れた唇の漏らす水音が、熱く高まる想いとともに肌を震えて伝わるだけだった。
止むことを知らない雨までも、溶け合う熱を冷ますために存在するかのように、二人はまるで気にしない。
そして、流れる雨水をそのままに甘い口付けを楽しんで恋人たちは笑い出す。
「すっごい雨」
既にどしゃぶりにまでなっている状況にディアッカは笑って言った。整えた髪は崩れて、額に掛かった前髪を邪魔そうにかきあげる。
足元に転がった傘は雨を溜める器のように、そこに小さなプールを作っていた。
「お前がくだらないこと言うから・・・」
睨み上げる目蓋にも雨が遠慮なく落ちて、ディアッカは水滴の流れを変えるよう額を出して前髪を避けてやる。
「仕方ないだろ、イザークが好きなんだから。好きで好きでたまらなくて、自分でもどうしようもないんだから!!」
ぎゅうっと体が折れるほどに抱きしめて、言う。
ちっぽけな嫉妬でさえ自分をなくしてしまうほど、この人に縛られて、この人を縛りたいと思ってしまうのだから。
「俺にはお前だけだと何度いったらわかるんだ?」
あきれた口調は、愛おしさが溢れて耳に、届く。
下がる白皙の目尻に雨が数瞬、留まって溢れた。
「何度だって言ってよ。一瞬だって忘れないって、オレだけだって誓ってよ。ねぇ」
腕の中で、見上げる瞳に駄々っ子のように強請る。たくましい体躯にはまるで似合わない言い様にイザークは可笑しくて笑った。
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