「だって、墓の前でイザークが何を言ってるのかオレは聞けないから・・・」
拗ねるようにつぶやく金髪の男にイザークは今度こそあきれて耳を引っ張った。
「いいか、よく聞け!毎回あいつらに言ってることは、任務を終えて無事プラントに帰ってきた報告と、お前をそっちに連れて行くな、ってことだ。貴様らの分まで俺たちは幸せになってやるから、ってな!」
雨に濡れた頬を赤らめて告げた内容に、イザークは顔を背け、ディアッカは信じられないと雨も構わずに目を見開いた。
「イザーク・・・」
「だからお前はバカだって言うんだ!」
目の前で驚いた顔が柔らかくほつれていくのを見て、イザークは小さな心の痛みが雨と一緒に流れ落ちていく気がした。
本当はそれだけじゃなかったけれど。
いつの間にか年下になった先輩にはあきれるような愚痴を、年少の同僚にはフェイスとなって複隊した少年のことを、聞いてもらっていたけれど。すべてを伝えることが最良ではないことを、真っ正直であるだけではうまく生きてはいけないことを、さすがに知るようにはなっていたから。
何より、目の前にある恋人の顔をこれ以上曇らせるようなことはしたくなかったから。
だからイザークは小さな嘘をついた。
「けど」
イザークの心を読んだようになおも不安を口にしようとするディアッカに、イザークはそれを許さなかった。
「けどじゃない。お前のせいでびしょ濡れだろうが!」
雨粒を邪魔そうに顔を傾げて、イザークは睨んだ。
その表情を受け止めたディアッカは負けた、というように小さく笑う。
「イザークはもとから濡れてただろ?」
「うるさいっ、お前のせいだ」
これ以上の口答えは許さない、とばかりに褐色の頬を両手で挟み込むとイザークは再びディアッカの唇を塞ぐ。
深く雪崩れ込む舌の熱に流されそうになりながらディアッカはイザークの体をぎゅっと抱きしめた。
知ることのできなイザークの本心。それは告げられた全てではないとは思ったけれど。
今はただ、冷たい雨の中で交わす口付けに酔っていたくて。
ゆっくりと目を閉じて、二人は雨の中で抱き合い続けた・・・・・・。
END
2005/7/25
あとがき
40000hit記念のキスシリーズ(?)第6弾。
雨の中のキスということで書いてみました。
思いついたのが梅雨の時期だったので雨なのですが、
実際書いたのは夏日連続な梅雨明けでした。
甘くないキスを書きたかったのですが、うまく書けたかどうか・・・。
ちょっとディアがヘタレな感じですが、たまにはね、ということで。
今後ともよろしくお願いします。
40000hit記念のキスシリーズ(?)第6弾。
雨の中のキスということで書いてみました。
思いついたのが梅雨の時期だったので雨なのですが、
実際書いたのは夏日連続な梅雨明けでした。
甘くないキスを書きたかったのですが、うまく書けたかどうか・・・。
ちょっとディアがヘタレな感じですが、たまにはね、ということで。
今後ともよろしくお願いします。