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副官として与えられた席に着きながら、ディアッカはPCのモニタを見るとはなしに見ていた。シホとの約束の時間まではあと少しだ。
ああは言っていたものの、シホの狙いとしては自分の実力を試すことだというのは見え見えだとディアッカはため息をつく。
そして同時に、一方的にライバル心をむき出しにして勝負を挑まれていた紺色の髪の青年のことを思い出す。あのころはシホのような控えめな挑戦ではなく、真正面からストレートにそれこそ火がつきそうな勢いで毎日のように繰り返されていたわけで、よくもまぁそれを放り出しもせずに付き合っていてやったものだなと改めて感心してしまう。
そう思いながら、かつての挑戦者の顔をちらりと見やると、いまや白い軍服に身を包んでいるその人はディアッカの考えを知ってか知らずか余裕の表情で副官の顔を見た。
「そろそろ時間じゃないのか?」
約束した現場に居合わせた上官は時計を見るとそう促した。
「ああ」
気乗りしない様子の副官にさらに続けてその人は言う。
「みっともないマネするなよ。せめて的の内側には当てるんだな」
そう言うがその顔には笑みさえ浮かんでいて腕前についてはまったく心配していないようだ。
「それって命令?」
席を立ちながらディアッカは聞き返す。
「いや、プレッシャーを与えてるだけだ」
イザークはすがすがしいまでの顔で言いのける。
「あっそ。そりゃどーも」
言って肩をすくめるとディアッカは射撃場へ向かったのだった。
「おまたせ?」
射撃場に着くと、すでにブースに入ってヘッドホンをつけたシホの姿があった。その一つ空けた隣にはご丁寧にディアッカのための道具一式が用意されている。
「お忙しいのにすみません」
形ばかりの挨拶にディアッカはそっと息をつく。
他のブースには訓練を装ったギャラリーが何人もいるのが分ったからだ。いくら訓練の規定があるとはいっても、個人が空き時間にこなす程度のもので、射撃場が混雑するほどに人が集まってまでやるほどのことではないのだ。
「・・・で、教えて欲しいって言われたけどさ、キミだって赤だろ?教えることなんてないと思うんだけどね」
そういうディアッカにシホは明らかに挑み顔だ。
「そんなことないです。私、射撃の成績はよくなかったですから。とりあえずやってみるので見てください」
言うなり手元のボタンを操作して前に向くとシホは銃を構えた。
パン、パン、パン・・・。
射撃が得意ではないといったのは謙遜どころか嫌味の域に達しそうだぜ・・・・・・ディアッカがそう思うほどにシホの射撃の腕は良かった。その弾丸は7割以上がマトの中央付近に集中し、残りの3割もターゲットの円を大きく外すことはなかった。規定の弾数をこなし終えて、結果はランクAと表示されている。
伊達に赤を着ているわけじゃない、か。
どこかの隊長が口癖のように言っていた言葉をディアッカは思い出す。
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