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「イザーク飯食った?」
「いや、まだだが」
 初日こそ周りの視線を気にして「隊長」を呼んでいたディアッカだが、その日が終わるときにイザークに向けて「オレ、『イザーク』って呼ぶから」と宣言していた。呆れ顔でそれを聞いていたイザークだが、「お前だけディアッカって呼ぶのにオレだけ『隊長』っていうのは納得できない」という理由に今までの付き合いの長さを考えれば仕方ないかと珍しく了承をした。もっとも、他の隊員に対してイザークを指し示すときは「ジュール隊長」ということは最低限守らせることにはしたのだが。
「じゃ一緒に食堂行こうぜ」
 そう誘うディアッカに促されてイザークは席を立つ。以前は隊長という立場から周りと距離を置いていて食事などは一人だったイザークだが、ディアッカが来てからそれは大きく変化した。しつこいくらいにディアッカが誘うのでほとんど一人で食事をすることがなくなったのだ。
 二人で連れ立って食堂に歩こうとしたときだった。
「あのディアッカさん」
 廊下にでるドアの手前でシホが遠慮がちにディアッカを呼び止めた。
「何?」
 ディアッカはラストネームが定着するより前に、隊長が『ディアッカ』と呼ぶ名前が浸透してしまったために隊員からもディアッカの名で呼ばれるようになっていた。本人の性格からしてもそれをどう思うというわけでもなく、今ではシホでさえそう呼んでいた。それに『さん』がつくのは、いくらディアッカが緑という立場でも隊長付きの副官であるし、年上だというせいもあるのだろう。だが、それに対するディアッカの態度といえば、赤服のエースパイロットに対する緑の士官というよりは、年下の女の子に対するものそのままだったが。
 シホはちらりとイザークを見るとディアッカに向いて言った。
「あとで時間あるときに射撃訓練に付き合ってくれませんか?」
「射撃?」
 唐突な内容にディアッカは驚いた顔をする。
「はい。いろいろ教えてもらいたいと思って」
「教えるって・・・オレ、射撃得意じゃないんだけど・・・」
 弱ったなぁという顔をするディアッカにイザークは笑って追い込んだ。
「いいじゃないか、ディアッカ。どうせまた期限ギリギリまで忘れて慌てるんだろ? 付き合ってやれ」
 隊長の一言にシホは喜んでディアッカを見ている。それを見下ろしながらディアッカはやれやれと思いながら「わかったよ」と了解するのだった。









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