ぼんやりと眺めた視線の先には、見慣れた銀の揺らめき。
「あ・・・」
 ずしりとした重みの正体は自分にまたがったイザークだった。
「おはよう」
 そう言って銀の髪が降ってくる。そろっとそれが頬に触れてくすぐったさに髪を掬い上げると、そのまま唇がそっと重ねられる。
「ん・・・」
 強烈なモーニングキッスにディアッカは一気に目が覚めた。
 驚いて目を見開く恋人に、イザークは楽しそうに笑っている。
「イザーク・・・」
 朝一番の枯れた声で名を呼ぶと、上官は副官の鼻をつまみあげながら笑った。
「いつもは俺が起こされてるからな。たまにはいいだろう」
 人の上にまたがりながら、偉そうに言う。その様子にとたんにディアッカは苦笑する。
「オレはイザークのために起こしてあげてるんですけどね。そのお返しが上に跨って偉そうに見下ろすキスですか?」
「不満か?」
 拗ねかけたイザークを笑いながら両手で抱きとめて、腹筋だけで起き上がる。
「不満なわけないでしょ。嬉しいよ。・・・おはよう、イザーク」
 言いながらキスを交わす。軽く唇を重ねるだけのキス。それにイザークは嬉しそうに微笑んだ。
 いつもは寝ぼけたイザークに一方的にしてるモーニングキッスも、こうして二人で笑いながらとなると格別だなと、そんなことをディアッカは考える。
 そして思いついたことを聞いてみる。
「あのさ、なんか、イザークに好きって言われた気がするんだけど、気のせい?」
 目が覚める直前にそんな声を聞いたような気がするのだ。けれど、夢の中だったような気もして、いまいち現実かどうか判別がつかない。
「気のせいだろ」
 そういうイザークは慌ててディアッカの上から降りようとする。
 それでピンと来た。気のせいじゃないんだ、って。くすりと笑いながらその腕を掴む。
「なに慌てて降りるの? このままでいいじゃん」
「慌ててなんかない。俺はお前が苦しいと思って・・・!」
 そういうイザークの顔はすっかり赤くなっている。自覚がないのが致命傷だと思いつつ、ディアッカはその体を抱きしめた。
「苦しくはないんだけどさ・・・違う意味でやばいかも」
 その言葉に一瞬遅れて反応したイザークは真っ赤な顔をして声を上げた。
「こんの、バカっ! 朝から何いってんだ!」
 腕の中でもがきながら、懸命に抵抗するイザークにそっと耳元でささやいて聞かせる。
「だって、イザークがキスなんてするから」
 いつもは自分がしていることなのに、すっかり棚に上げて。
 イザークからのキスは特別だから、と。
「・・・!」
 自分のせいだと言われて黙ったのは一瞬で。すぐにイザークは反撃に出る。
「なら、もう二度と俺からキスなんてしないからな!」
「えぇ、そんなぁ〜」
 薄情なー、と訴えつつも、珍しく朝からイザークっぷり全開な様子に幸せを感じてしまう。 
「じゃぁせめてもう一回キスしてよ」
 イザークからのモーニングキッスなんて、そうそうあることじゃないから。
 その頬に唇を寄せながら強請ってみると、目を閉じたイザークが近づいてきた。
 その一瞬がすごく長く感じられて。
「大好きだよ」
 そう耳元でささやきながら、見上げるイザークの顔は、いつもよりずっときれいで、幸せそうだった。






END



2005/6/15



あとがき。

3万打のお礼のつもりで書いたキス話。
あまり考えないでだらだら書いてたら、やっぱりダメダメな話になってしまいました・・・。
イザークの話じゃなかったのー? という突っ込みはしまっておいてください(苦笑)
こんな調子ですが、だらだらやっていきますので。
こんごともよろしくお願いします。


おまけ