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 プラント。
 ZAFT本部の廊下をアタッシュケースを片手に一人の青年が走っていく。
 まっすぐに切りそろえられた銀の髪をなびかせて、白い隊長服の裾を乱しながら大股で走る姿は、隊員が見たら驚きで言葉を失うだろうというほど彼にしては珍しい光景だった。
 戦闘時を除いてはいつもクールな人間として知られていたし、そもそも戦闘が起こるような宇宙空間では、無重力の壁を蹴ることはあっても、床をばたばたと走るなどということはなかったから、隊長が走る姿なんて想像できないというのが、隊員の間での定説だった。
 その人物がそこまで急ぐには理由があった。
 空港管理のトラブルに巻き込まれて入港手続きに手間取ったせいで、夕べのメールで決めていた待ち合わせ時間からはずいぶんと遅くなってしまっていた。待ち合わせ相手の携帯に連絡をしてみても仕事中なのかつながらず、一応メールを入れてはみたものの、それも読んでいるかどうか。相手の性格からして、それが届かなかったところで機嫌を損ねるようなことはないだろうが、それでも自分の気持ちがすまない。少しでも早く、とその脚はより急ぐ。

 青年はカフェテラスに駆け込むと、ぐるりとあたりを見回した。そして窓際のソファに求める人物の姿を認めると、そこへまっすぐに駆け寄った。
「おっせーよ」
 その人物はすぐ近くに立った人影に気づくと、読んでいた雑誌から目を上げて開口一番に不満を告げた。だが、その口調はあくまで柔らかい。
「入港手続きに手間取ったんだ。連絡はしたぞ」
 言われたほうもぞんざいな口調ながら、相手と会えたことへの安堵がにじみ出た声だ。
「コーヒー3杯と雑誌代、お前のおごりな」
 そう言いながら伝票を差し出す。
「コーヒーはともかく、そんな雑誌の金は払わんからな。読むならもっとまともなものを読め」
 指先から伝票を取り上げると、銀髪の青年はとっとと会計に向かって歩き出す。
 ソファから立ち上がりながら、女性の水着姿が大写しになった表紙の雑誌を丸めると、待たされていた人物は後について歩き出した。


 
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