Blooming day




「あぁもうっ!!絶〜対っ、休んでやる!休暇だ、休暇っ」
 ガシガシと金色の髪を掻きむしりながら、副官がわめいた。
「うるさいぞ、少しは静かにしろ」
 クールな言葉で嗜めるのはザフトきっての人気部隊であるジュール隊の隊長、イザーク・ジュール。喚いているのはその副官であり元ザフトレッドのディアッカ・エルスマン。ジュール隊の所属基地でのことだ。
「だってさぁ・・・!」
 泣きそうな仔犬のように目を潤ませて、じっと自分を見つめてくるディアッカにイザークは軽くため息をつく。
「仕方がないだろ、忙しいのはお前だけじゃないんだ、あと2日我慢しろ」
 上官の言葉にぶすっとふてくされるのを隠そうともせず、ディアッカは自分の席に向き直った。

 この1ヵ月半、イザークもディアッカも休みらしい休みを取っていない。
 理由は人手不足だった。
 ジュール隊は他の部隊と比べると構成人員が少ない。それは、機動力を重視いているというのもあるし、隊員に求められるレベルが高いということもある。損害率が低いこともあってその編成は見直されることもなくずっと少数精鋭でやってきた。
 ところが先月、人員の異動があった。異動といっても一時的な配置なのだが、ジュール隊のパイロットが何人か他の部隊に出向している。ぎりぎりの人数で動いていた部隊はあちこちに支障が出始めた。そこへシホが負傷というアクシデントも重なった。訓練のMS戦で搭乗していたMSの整備不良で怪我をした。利き腕を骨折し、顔にも傷ができた。人手不足だからと休まないつもりのシホをイザークは無理矢理休ませた。休む必要があるときに休ませないのは上官としての自分の力不足に他ならないと思っているからだ。しかも少女が顔に傷を負ったとなれば、きちんと直すまで休むことが必要だとイザークは考えたのだ。
 おかげでイザークとディアッカは休めなくなっていた。フル活動しても仕事は次々やってくる。シホがそれなりに優秀だっただけに欠けた分の負担は小さくなかった。
 あと2日で出向組が帰ってくることになっている。そうしたら一日くらい休みを取ることはできるだろうと、それだけを頼みの綱に二人は何とかやってきていた。




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