目を開けた瞬間に脳裏に映ったのは最後のシーン。
自分が一人取り残されて、なす術もなく立ち尽くしていた。
現実にはありえないであろう話だった。どこの宇宙港だかわからないが民間のシャトルに大勢の人間とともに逃げるように乗り込もうとしていて、何故か自分だけが乗ることを許されなかった。目の前でシャトルはハッチを閉じて空高く上がり、発進シークエンスに入っているのが外からでもわかった。だが、自分は何もできなかった。一人になった、という孤独感が足を地に縛り付けるように、動くことができなかった。
そして、目が覚めた。
そんな夢ならば忘れてしまえばいいのに、そういうものに限ってくっきりと焼きついている。だから、寝起きの気分は最悪だった。けだるく寝返りをうてば隣にいるはずの存在はすでにそこにはいなかった。重い頭を反転させてデジタルの時計を見れば時刻は昼近い。今日は休日で特に予定はないのだから好きなだけ寝ていても構わないのだが、それにしても寝すぎだ。寝過ごしたという事実がまた追い討ちをかけて気持ちを沈みこませる。
最悪だ-----。
いっそこのまま寝続けてやろうかと思うが、今さら寝なおす気にもならない。それよりこの、胸の重さだけでも取り除きたいと布団の中でぼんやりと考える。
寂しい。
たぶんそれが一番しっくりくる言葉。
あの取り残されたときの胸を締め付けるような苦しい気持ちが、強烈に頭の中に残っていて、いまの現実の自分を支配している。
ぬくもりに触れたかった。
もっと早い時間だったら手を伸ばせば隣に人がいて、頼みもしないのに抱きしめてくれうだろうに。リビングにいるのであろうその人は自分がいま、こんな気持ちでいることになんて気づくはずもなかった。
きっと呼べばすぐに飛んでくるのだ、あいつは。それはわかっていたけれど、素直になれない性格がそれを邪魔していた。
様子を見に来い、と他力本願に思う。
こんな時間まで起きてこないんだから、心配して様子を見に来たってよかった。そうしたら、あいつは気づくかもしれない。いや、きっと気づくから。ぎゅっとシーツを握ってあいつに届くように強く願った。
そうしたら、本当に寝室のドアが開いたから。その姿にほっとする気持ちを抑えることができなかった。
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