きっとそれをニヤニヤしながら見ているであろうミゲルに、ディアッカは見せ付けるようにイザークの右肩を引き寄せた。二人のキスはあけすけに蛍光灯の下に晒される。それを境にディアッカのキスは罰ゲームの域を越えた。
 重ねていただけの軽い口付けはイザークの唇を割って入ったディアッカの舌によって、深く絡まるものに変わる。
 予想外の事態にイザークは慌てたように目を見開いて抗議しようとするが、それを無視してディアッカは口腔の奥深く逃げるようなイザークを追いかけて攫った。熱い舌先に翻弄されてイザークの体からは力が抜けていく。抗議するために掴んだ手は縋りつくためのものになり、怒りに顰められた眉は息苦しそうにゆがめられた。水音を伴う口付けにイザークの体は次第にコントロールを失う。がくり、と膝から力が抜けそうになるイザークの股に膝を差し入れて受け止めると、さらに歯列をなぞってイザークを攻める。
 ミゲルがイザークにちょっかいを出すのは、まじめな人間をからかうのが面白いというだけではない、とディアッカは思っていた。ミゲルのやり方を見ているとまるで幼い子供が好きな女の子をいじめて泣かせているような気がしてくるのだ。
 そしてそれはおそらく間違いじゃない。
 ディアッカがいつも傍にいるからそう簡単には手を出さないのだろうが、ミゲルのイザークに対する気持ちは段々と本気度を増している気がするのだ。事実、ゲームと称してイザークをからかう回数は以前よりずっと頻繁になってきていた。
 そして今日の罰ゲーム、タチの悪さは多めに見てやる限界だった。そっちがそこまでするならこっちはそれを利用するまでだ。
 漏れそうになる甘い声を鼻から抜くようにして懸命にごまかしているイザークは「ん・・・」と小さく声をあげてうっすらと目を開けてディアッカを見た。
 下半身は力が入らなくなっていて足首からがくがくと崩れ落ちそうになっているのにもう自分ではどうしようもなくて、助けを求めるように見上げたのに、まるでそれに気づかないようにディアッカはイザークを翻弄し続ける。
 こんなはずじゃなかった、とイザークは事の顛末を思い出すが、それももう今さらだった。相手にディアッカを選んだのは自分だったし、そのディアッカがどんなキスをしてきても負けて罰ゲームを喰らった自分が悪いのだから何も言えないのだ。必死にしがみついている指先はディアッカの制服の上で色が変わりそうになっていた。その一方で体の奥に生まれる熱には抗いようもなくて、逃げていたイザークもいつのまにか理性の糸を溶かし切られてディアッカを求め深く口付けをし返していた。




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