目の前に繰り広げられる濃厚なキスシーンに遊び半分で見ていた面子は言葉を失った。
 そしてミゲルはディアッカの意図を悟る。これは見せしめ、だ。これ以上イザークにちょっかいを出すなら黙っていない、というディアッカの意思表示。からかってやるつもりが思わぬ展開だった。いつもすっとぼけているディアッカがイザークに本気だ、とはっきりと知らしめる行為は言うなれば宣戦布告に等しかった。
「ってされてもなー」
 ミゲルはつぶやく。
 こんな布告をされたって勝負なんて最初からついている。罰ゲームの相手を決めろといったときにイザークは躊躇なく「ディアッカだ」と答えたのだ。それが当たり前だというように迷うこともなかった。イザークにあんなことをいとも簡単に言わせるというのだから、この段階でもはやディアッカに敵うはずないのだ。そのうえこんな熱いキスシーンを見せ付けられるとあっては、ミゲルとしては踏んだり蹴ったりだ。アカデミー以前から知り合いだったというディアッカとイザーク。自分ももっと早くイザークと知り合っていればとも思わないわけでもないが、それでも勝負になっていたかどうか。
「ディアッカ、本気ですね・・・」
 ニコルの言葉にアスランは驚きながら頷く。けれど、ミゲルは「やめやめー」と手を振ってソファから立ち上がった。
 ミゲルの声にイザークは人前だったことを思い出し、慌ててディアッカを突き飛ばして唇を離すと、両腕を壁に突いてずり落ちていた体を引きずり上げた。ディアッカは表情もなくミゲルを見る。
「罰ゲームなのにディアッカに楽しまれちゃ意味ないからな、もうやめだ、やめ」
 言いながら二人の脇を通り過ぎてミゲルはちらりとディアッカを見て返す。
「へぇ、ミゲルって意外とちっせー奴。もっと楽しませてくれたっていいじゃん」
 軽いノリで言うディアッカにミゲルは余裕を取り戻して笑う。
「あぁ、知らなかった?・・・ってか、ちっせぇのはディアッカじゃねー?」
 人前なのにらしくもなく本気出しやがって。視線だけでそう言ってミゲルはラウンジを出て行った。
「・・・ディアッカ」
 二人のやり取りをすぐ間近で見ていたイザークが声をかけた。何とか自分を取り戻してはいるが、肌の色まではコントロールできなくてその頬はうっすらと紅潮している。
「もういいってさ。ミゲルが言ってんだから、終わりだよな?」
 声だけで後ろのラスティたちに聞く。けれどそれは確かめるというよりは有無を言わせない強引さを持っていた。
「べっつに、いんじゃなーい?」
 ラスティの返事がしてディアッカはイザークの手を引いた。
「帰るぜ」
 強引に歩き出すディアッカに引きずられながらイザークは慌てて声を上げる。
「おい、帰るって・・・」
「お前のフォローしてやったんだから、今度はオレのわがまま聞いてもらうから」
 振り向きながらそういう顔にイザークは何も言えなかった。ディアッカが何を言いたいのかわかったのだ。そして自分が考えていることもきっと同じだと思ったから。
 深いキスでともった熱はまだ冷めてはいない。
 イザークは引かれている手をぎゅっと握り返した。
 奥深く、火照る身体が元に戻らないうちに-----。二人は早足で自分たちの部屋へと戻っていった。



END



2005/10/15



あとがき


6万打記念として、終わったはずのキスものです(笑)。
今までで一番刺激が強い話になったような気が。
ミゲル兄さんが登場したからでしょうか。
ミゲ→イザはあくまで好意、プラトニックの範囲で。
うちのディアイザは誰にも邪魔されないのが理想です。
でもたまにはスパイスが必要だよね、ってこんな話になりました^^;
この後二人は燃え上がりそうですねー(笑)
・・・お粗末様でした。