「お前は変なところでアンバランスだな。ロマンチックなのか現実的なのかどちらかにしてくれ。でないと付き合わされるこっちがついていけん」
くつくつと肩を揺らして笑うイザークにディアッカは傷ついた顔をする。
「なんだよ、人が真剣に言ってるのに、笑いやがって」
「天の川なんて地球から帯状に見える星の集まりだろ。それに隔てられるなんて現実にはないさ。演習で何度も宇宙に出てるやつが言うセリフか?」
イザークの一刀両断にディアッカは黙り込む代わりにイザークの手から杯を取り上げると床に置いた。
「おい、ディアッカ」
「細かいことはどーでもいいだろっ。とにかく、待ち合わせ場所を決めておこうぜ」
強引に言うディアッカにイザークは向かい合うようにして座りなおすと言った。
「俺はそんな約束なんてしないからな」
「何でだよ?」
ディアッカの問いかけに、白い指を褐色の鼻先に突きつけるときっぱりとイザークは告げる。
「俺は死なない。だからそんな約束なんて必要ない」
強い言葉。けれどそれは自分に言い聞かせているようにも聞こえて、ディアッカはブルーの瞳を見つめた。深い海の底を思わせるその色は、まっすぐにディアッカのことを見つめ返す。
「・・・わかったよ。じゃぁいいよ。オレがどっかで死んだら、イザークのMSにずっとくっついてまわるから」
肩をすくめて冗談めかして言うと、途端にイザークが怒り出した。
「俺が死なないって言ってるのに、お前は死ぬなんて言うな!おまえは俺を一人にして死ぬつもりなのか?!」
ぐさり、と突き刺さる言葉にディアッカは自分の言葉がイザークを酷く傷つけたことを知る。
「・・・ごめん」
「謝るな。謝るくらいなら否定しろっ」
ぷいっと横を向いてしまったイザークの腕を引いて、ディアッカはぐっと抱きしめる。
「オレも死なないよ。ずっとイザークと一緒にいたいから、だから死なない」
その言葉に満足したのか、イザークはディアッカの肩口に額を押し付けて黙り込んだ。
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