「これは・・・」
それは思いがけず見つかった。
実家を出たといっても半分以上を宇宙で過ごしている現状、久しぶりに帰った自宅は人の住んでいる気配が見事にしない空間となっていた。
当然、あちこちは埃にまみれていて落ち着けるような状態ではなく、まずは掃除をしようということになった。
ちょうど、年の暮れ。大掃除という風習がある地球の極東の国の文化を愛するディアッカは「じゃあついでに大掃除しよう」と言い出した。掃除が苦手で気乗りしないイザークに「自分の部屋だけでいいから」とこの部屋の共同所有者である恋人は甘やかすことをいい、しぶしぶ白服の隊長は私服に着替えてマスクをしながら部屋を掃除する羽目になったのだ。
そしてそれは、クローゼットの引き出しの奥から姿を現した。
赤いスポンジで出来た球形の物体は、耳にかけるためのゴムが両サイドに取り付けられている。
フワフワしたものを手に取ったイザークは手触りを懐かしむように握り締めて、しまいこまれた記憶を思い出した。
「なんで、俺がこんなもの!!」
暴れて抵抗しようとするイザークをニコルとラスティが後ろから押さえ込む。
「仕方ないですよ。新入生はみんな通る道なんですから」
鶯色の髪の少年は言うがそんなもので大人しく引く少年ではない。
「なんで、入学が遅いだけで言いなりにならないといけないんだ!!」
実際、上級生に自分より年下がいるのを知っているイザークはそんなことを言う。
「軍は上下関係が絶対だ。ここではその上下が入学した時期で決まる------それだけのことだろ」
あきらめ口調でアスランが言うと、イザークはキッと睨み返した。
「きさまが偉そうに言うな!」
噛み付きそうな口調で言われてアスランは「はぁ」とため息をついた。
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