「イザーク?」
ディアッカがイザークの手元を覗き込むとそこには「トナカイA」と書かれた紙がある。
「何なんだ、これは!説明しろ、ミゲル!」
激昂しかけてイザークはディアッカに止められる。
「クリスマスのイベントだよ。毎年新入生がサンタとトナカイのコスプレで寮の部屋を回るってのがあるんだ」
「コスプレ?」
ラスティが声を上げた。
「そ。ちゃんと衣装は用意してあるから安心しろ」
ミゲルが言うとラスティは大喜びした。
「面白そー。オレがトナカイ。うははっ、やってみたかったんだよね、こーいうの」
その隣でアスランが複雑な顔をする。
「コスプレって・・・、何もそこまでしなくて・・・」
「ここは軍人の学校だぞ。なんでそんなお祭騒ぎをしなくちゃならない!!」
自分の引いたくじを投げつけてイザークはがあああっとミゲルの襟首を掴み上げた。
「おいっ、こいつ抑えろ、ディアッカ」
ご指名を受けてディアッカはイザークを剥がしに掛かる。
「んで? オレもその理由は聞きたいね、衣装まで用意してるなんてわけをさ」
後ろからイザークを羽交い絞めにしたままディアッカは尋ねる。
「もともとは料理のおばちゃんたちがクッキーを配ったのが始まりらしいんだけどね」
ともすれば殺伐としがちな軍学校の寮という場所で、せめて年に一度くらいは子供らしくイベントを楽しんで欲しいと、調理部の女性が勤務時間外に作ったクッキーを部屋の数だけ用意したのだという。それを寮生が配るようになり、やがて新入生がサンタの格好をするようになった、ということだった。
「だからって何でそれが僕たちの担当なんですか?」
ニコルが素朴な疑問を口にする。
「あぁ、それはオレの独断と偏見」
だって新入生全員にくじ引かせるのって面倒じゃん、とミゲルは笑う。
「なんだとー!」
そんなくだらん理由で冗談じゃない、とイザークは吠え立てた。
「お前らなら上級生にも顔を知られているから、いいだろ」
もう決まったんだから文句言うなよ、と上級生は言った。
一人文句を言い続けるイザークを他所にミゲルはラウンジを出て行く。
「あ、やるのは24日だからな」
そういい残すのを忘れずに。
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