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「気がついたか」
破損したジンの機体から運び出されたイザークは重症ではなかったために、自分の部屋に運ばれていた。
同室のディアッカは看病という名目で戦闘後の事務処理は免除されずっとイザークに付き添っていた。
投与された薬のために3時間も眠り込んでいたイザークは、寝返りを打つとゆっくりと目を開けて、辺りを見回した。
「艦のオレらの部屋だよ」
声のするほうに首を傾ける。上着を脱いだ格好でディアッカがベッドの上から覗き込んだ。
「暗い」
「ああ、悪い。よく眠れるように消しといたんだ、ベッドサイドだけ」
言われてディアッカは手元のパネルを操作する。すぐにベッドサイドに明かりがともった。
「奥のデスクのほうは点いてるからいいかなと思ったんだけど。ほんと、だめなのな、お前って」
そこで思い出したようにイザークは聞いた。
「俺は…?敵は?」
「お前は敵のサーベル食らってショートしたコクピットの中に閉じ込められて、俺がジン抱えて戻ってきたんだよ。
怪我はたいしたことないみたいだけど、気を失ってたから点滴打たれてな。敵は士官が全滅させたよ」
手短に説明をするディアッカにイザークは目を合わせようとしない。
「おまえさぁ」
言いかけたディアッカをさえぎってイザークは声を絞り出した。
「わかってる、俺だって。暗闇が怖いパイロットなんて使い物にならないってことぐらいはな!今日だって
気絶するつもりなんてなかった。俺はちゃんと意識は保ってた!」
ぎりぎりとこぶしを握り締めるイザークに軽く息をついてディアッカはジェスチャーをしてみせた。
「ああ、こーいうやつ?」
両腕で自分の肩を抱き寄せるようにしてみせる。それはコクピットのなかでイザークがしていた格好だった。
「ただ、お前がっ。ディアッカの顔が見えたから、それで気が抜けて、油断して……」
言ったとたんにイザークの白い頬が赤く染まった。つい、と顔を横に背ける。
「イザーク…」
口が滑ったという顔をしたイザークにディアッカは思わずにやついてしまう。嬉しいことを言ってくれる。
ベッドに座りながら、ディアッカはずっと聞けなかったことを聞いてみた。
「なぁ、なんで暗いのが怖いんだよ?」
「……」
すぐに答えが返ってくる訳はないと思っていたら、イザークイの口からポツリと単語がもれた。
「家で…」
「えっ?」
イザークを振り返るが顔はそむけたままだ。
「うちは両親がいなかったから。夜は家で一人が多かった」
ああ、とディアッカは納得した。ディアッカの家とはちがって、イザークの家は母親も第一線で活躍する人物である。
その忙しさは半端なものではないのだろう。
「小さいころ、一人で寝るのが怖かった。暗い部屋に一人でいると暗闇が迫ってきて押しつぶされるような気がしたんだ。
だから…それで…」
言いよどむイザークをディアッカはやさしく抱き寄せた。
「いいよ、もう言うな」
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