「なら、俺は宇宙一だ!!」
大きく出たな、とディアッカが見おろすとイザークはまるで自分が何に腹を立てていたのかも忘れてしまったかのように、ディアッカだけをじっと見ている。
これ以上、負けることはないだろうとイザークが安心しているのがわかって、ディアッカはとどめの一言を告げる。
「ところでさ、イザーク。好きと嫌いは同じ感情が源だって知ってる?」
「はっ? 何言ってるんだ、お前」
訳がわからないというイザークににやりとするとディアッカはその腕に力を込めて言う。
「好きも嫌いもその人間が気になるってとこから始まるんだって。だから、一番嫌いってことは一番気になるってことだよ? つまり一番好きっていうのと同じこと・・・。イザークはもともと素直じゃないからな、そんなに好きだなんて言ってくれて嬉しいよ・・・」
訳がわからないまま抱きしめられたイザークはパクパクと金魚のように口を開いて必死に酸素を吸っている。
「ば、バカッ! 離せっ」
「やだ」
バタバタと暴れてすっかり腕に抱きすくめられて、イザークは身動きができないままだ。
そして、はた、と気がついた。自分はさっきまでアスランとの試合に負けてそれが悔しくて仕方がなかったというのに。実際、床には八つ当たりした挙句に壊れた物が散らばっている。なのに、ディアッカのからかいのせいで、そんなものすっかりどこかにいってしまった。
また、やられた。
こうしていつも上手く丸め込まれてしまう。ディアッカの存在が大きいと改めて思い知らされる。
「イザーク?」
すっかり黙り込んだイザークにディアッカは顔を覗き込む。
「・・・お前なんか一番嫌いだ・・・」
そこで言葉を区切ってイザークはディアッカの紫の瞳を睨み返す。
「だから・・・一番好きだ!!」
言うと同時にイザークはディアッカの唇に自分のそれを押し付けた。
突然の出来事にディアッカはほんの少しだけ驚いて、けれど、余裕たっぷりでそれを受け止める。
「それって宇宙一?」
にやっと、唇を離した合間にディアッカは笑って聞く。
「当たり前だ」
ふん、と笑ってイザークは頬を真っ赤にしたままディアッカに自分から抱きついた。ふわり、と銀色の髪が頬に触れてディアッカは目を細める。
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