毎度毎度、こんなことばかり繰り返している関係なんてばかげているのかもしれないけれど、それでも構わないと思わせるほどの魅力がイザークにはあって。すっかり虜なのだ、と思う。
 イザークを抱きしめていた腕の位置を変えて、ディアッカはイザークを突然抱え上げた。
「うわっ、何だっ」
「医務室、いかないとでしょ? そんな手首じゃ明後日の射撃の授業でまたアスランに負けるぜ?」
 腫れ上がった手首をすっかり忘れ去っていたかのようにイザークは驚いた顔をする。
「そんなのっ、自分で歩いていける! 下ろせっ」
 イザークの抗議に少しだけ残念そうな顔をしながらディアッカはそっと床にルームメイトを立たせる。
「まったく、調子に乗るな! お前はすぐにそうだ」
 普段の様子を取り戻したイザークに小さく微笑みながらディアッカはつまらなそうな素振りをして頭の後ろで両腕を組んでみせる。
「せっかくのチャンスだったのに、惜しいなー」
「バカ!何言ってんだ」
 イザークはそのまま部屋のドアに向かい、その後についていこうとしたディアッカにすかさず鋭い言葉を投げつける。
「俺が戻ってくるまでに部屋を片付けておけ」
「えぇー、なんだよ、それぇー」
 するとイザークは腫れた手首をここぞとばかりにかざしてみせる。
「こんな腕じゃ片付けなんて出来ないからな」
「ちぇっ、怪我なんてしてなくたっていつもオレにやらせてるくせに」
 そして先週壊れたコップの替えをようやく手に入れたばかりだったのに。
「わかったな」
 選択の余地なんてまるでない命令にディアッカは小さく息をつくと「へいへい」と拗ねてベッドに座る。
 そしてイザークは部屋を出て行き、ディアッカは散らかった部屋に残された。

「あれ、イザーク」
 部屋を出て、ラウンジに向かおうとしていたニコルは廊下の先を歩くその後姿に気がついた。
 見たところすっかり、機嫌は直っているらしい。不機嫌なオーラはまるでなく、どちらかというと機嫌がよくさえ見える。
「一体、どんな魔法を使ったんですかね、ディアッカは」
 今頃、部屋の中で壊れた物の後片付けに追われているであろう金髪の少年を思って、誰にともなくニコルは呟いた。その答えが本人たちから明かされることはなかったが、それはやがて勘のいいニコルには自然と気づかれることになる。



2006/1/13




あとがき


没になった話の代役の話。
もともとは緑白で書いていた話ですが、アカデミー時代にしてみました。
同じお題で書いても全然違う話になったなぁ・・・。
添え物ニコルはハンバーグセットのブロッコリーみたい(笑)




5