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 ガシャン。
 部屋に入るなりディアッカは何かを踏んで眉を顰めた。
 足元を見ればそこにあるのは見覚えのあるガラスの破片。
「・・・これ、オレのコップじゃん・・・」
 しかも先週買いなおしたばかりのだぜぇ・・・と悲鳴のような声を出しながら視線を上げて見れば、真っ赤な顔をして立ち尽くしている同室者がいた。
「イザーク・・・」
 すでに一通り壊せる物を壊してしまったのか、ただ拳を握り締めてギリギリと腕を震わせている。
 何も言わないイザークにため息をつくとディアッカはそのまま近づいてその腕を引く。思いのほかあっさりと腕の中に納まったイザークに、けれどその違和感にすぐにディアッカは気がついた。
「手首・・・腫れてるよな?」
「うるさいっ」
 ディアッカの気遣いさえ遮断するような言い方だが、強いのは口調だけで抵抗する素振りはない。
「なるほど、最初の対戦で傷めて・・・だからアスランと・・・」
「黙れッ」
 怪我をしたことを恥じて隠したままアスランと試合をして、それで負けたことを悔しがって物に八つ当たりして・・・。まるで子供だ、とディアッカは苦笑する。
「バカだな。怪我してるなら無理してアスランとやることないだろ。それで負けを増やしてどうすんだよ」
 負け、の言葉にイザークはぐっ、とディアッカの胸で拳を握った。
「うるさいっ、黙れっ!」
「怪我くらい恥ずかしいことじゃないだろ。・・・ったく、そんなにアスランと勝負したいのかよ」
 見事に腫れ上がった手首をいたわるようにして掴みながらディアッカは言う。
「うるさい! 負けは負けだ!怪我なんて理由になんてなるかっ! くっそーーーーっ」
 あっけなく押さえ込まれた場面を思い出しているのか、イザークはディアッカの手を払うと無事な右手の拳でドカドカと胸板を叩き付けた。
   まったく。
 潔いのがいいことなのか、とここまでくるとディアッカは疑問に思う。とにかくイザークは適当な加減というのがわからないから、いつでも何でも全力で、その反動が大きすぎるのだ。
 ポンポン、とあやすように抱きしめた背中を叩くと、イザークは大人しくなった。ただ拳をギリギリと握り締めていたが、やがて額をディアッカの制服の肩に押し付けるようにした。




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