パンパンパンパーン☆
「「「ハッピーバースデー」」」
「おめでとーアスラーン!!」
 派手派手しいクラッカーの音に続いてどこから現れたのかゲーム参加者が勢ぞろいして二人を取り囲んでいた。
「え?」
「なっ」
 あっけに取られる二人に周囲のメンバーはニヤニヤだったりニコニコだったり意味不明に笑っている。
「みんな・・・」
 誰も仮装なんてしていなかった。ていうかそもそもゲームをしてたのかすら怪しい。
「ハッピーバースデーって・・・」
 イザークが気がついて目の前のアスランを見る。
「そ。日付変わったからアスランの誕生日!」
 ラスティが解説すればニコルは作戦成功に満足そうな顔をしている。
「やっぱり大正解でしたね」
「見たか、あのスケベ顔」
 うししし、と笑いながらミゲルが思い出しているとうんざりした顔でディアッカはうめく。
「変態ヅラなんか見て楽しくないっつーの」
 ようやく意味が分かりかけた二人にニコルがダメ押しの説明をしてやる。
「ハロウィンの仮装ゲームっていうのは嘘ですよ。アスランのためにイザークを仮装させるのが目的だったんで」
「アスランのため・・・?」
「そうだよ。アスランが一番喜ぶのはイザークのことだからね、これが俺たちからのプレゼント」
「変態にカボチャパンツはぴったりだろ」
 自分の計画成功にミゲルは嬉しそうだ。
「カボチャパンツって・・・」
 はっとして自分の格好を思い出したイザークは真っ赤な顔をして慌てて膝をあわせる。「お、お前ら!!」
「あぁイザークダメですよ、そんな格好したらますますアスランが喜んじゃいますから」
 ニコルが毒を吐くとディアッカはあきれて息をつく。
「もう勝手にしろよ」
 訳がわからないまま突っ立っていたアスランは我に返ってみんなを見る。
「俺の誕生日祝いってこと・・・?」
「そうですよ。気づくのが遅すぎます」
「カボチャパンツに気をとられてそれどころじゃなかったんだろ、変態だから」
 ディアッカがどうにでもしてくれ、と横を向くとミゲルがまとめるように言う。
「ま、こんなことできるのも今のうちだしな」
「あ、イザーク!」
 それまで我慢していたイザークは仮装の衣装のまま駆け出していき、気づいたニコルが声をあげた。
「何してるんです、アスラン。追いかけてくださいよ」
「え、でも・・・」
 戸惑うアスランにラスティが追い討ちをかける。
「あんな格好してるイザーク放っておくなよ〜。隠れイザークファンは多いんだから〜」 危険がいっぱいvとからかうセリフにアスランは堪らずにイザークの後を追いかけた。
 結局その場に残されたのはそれ以外のメンバーだ。
「どうします?この写真」
 ニコルが手にしているのはゲームの証拠である仮装姿の二人の写真。魔女のイザークとドラキュラのアスランだ。
「オークションにでも出すか? あとでアスランにサインでもさせたらプレミアつくし」
 ミゲルの意見にニコルは頷いた。
「そうですね、今回の経費くらいは回収できそうですしね」


 その頃アスランは屋上に逃げたイザークに追いついていた。
「イザーク!」
「来るなっ」
 魔女の仮装のままイザークは屋上の柵に寄りかかっている。
「でも・・・」
 アスランが歩み寄るとイザークに逃げる気配はない。
 隣に立って横顔を見るとイザークはすねた顔をしている。
「イザーク?」
「お前の誕生日って・・・」
「あ、うん。もう日付変わっちゃったからそうだね」
 今はもう10月29日。アスランの誕生日だ。
「悪かった・・・」
「え?」
「俺はお前に何もプレゼントなんて用意してないから・・・」
 申し訳なさそうに小さな声でいうイザークにアスランは笑った。
「気にすることないよ。毎日忙しいんだから。それにそんな格好のイザークを見られただけで十分だし」
 自分に向けてウインクをするアスランにイザークは渋い顔をする。見下ろしてみればたしかにとんでもない格好だった。
「いいぞ」
「ん?」
「だから!お前が喜ぶならこの格好でお前の部屋に行ってやってもいいって」
 ぼそぼそと小さな声で呟くイザークにアスランはだらしなく顔をにやけさせる。
「本当?!」
「だがな!他の誰かに見られるのだけはごめんだからな!」
 ぷいっと横を向くイザークの体をアスランは堪らず抱きしめた。
「ありがとうっ!!嬉しいよっ」
「あ、ばか!離せ!」
 そのまま連れ去ろうとするアスランにイザークはじたばたを抵抗してみせる。その肘が顎に入ってもアスランのにやけ顔は戻らない。
「アスラン!!」
「なに?」
 何とかアスランの腕を振りほどくとイザークはその正面に立った。つい、と近づくイザークの顔。
 一瞬重なった唇に目をパチパチとさせながらアスランはイザークを見つめた。
「誕生日おめでとう」
 照れながら言うイザークにアスランはにっこりと笑う。
「ありがとう」
 
 その後、イザークの仮装衣装がどうなったのかは誰にもわからなかったが、変態アスランが活用してるに違いないと誰もが思っていた。それによってアスラン変態説に拍車がかかったのは言うまでもない。




fin.



初出:【pumpkin】2006.10.29刊






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