次のポイントでは黒いフード付の上着をゲットし、その次のポイントではトンガリ帽子をゲットした。
 それなのにイザークは何も思わないらしい。
 いよいよ最後だ、とアスランはおびえる。あのカボチャパンツをみたイザークはどんな反応をするんだろう。
「ねぇイザーク、リタイアしないか」
「ふざけるな、何言ってる?!」
 だって次はもうカボチャパンツしかない。
 あれをみたらいくらなんだって気がつくだろう。そうしたらどんな切れ方をするのかわからないじゃないか。

「あったぞ」
 屋上のドアをあけてイザークが言った。
 もう終わりだ。
 やっぱり軽い気持ちでカボチャパンツが見たいからってイザークを誘うんじゃなかった。アスランがそう思っている間にもイザークは不自然に屋上に置かれている一つの机に歩み寄る。
「仕掛けはないな」
 今までのポイントにはことごとく何らかのトラップがあったのだが今回はそれがないらしい。だがアスランにしてみれば置いてあるもの自体がイザークを爆発させるトラップ以外の何物でもなかった。



「アスラン・・・これは何だ・・・」
 あぁ!
 イザークの声が恐ろしく低い。
 ご丁寧に屋上に置かれた机にはライティングがされておいてあった仮装パーツの鮮やかな色がはっきりとわかるようにされてある。
「それは、その・・・ミゲルが・・・」
 俺だって被害者なんだ!とアスランは心の中で訴えるかイザークは聞いてくれるわけなかった。
「帽子とほうき、ブーツと黒のフード付上着・・・それで、このオレンジか!」
「たぶん、魔女・・・じゃないかな・・・」
「そんなものは判ってる!俺が聞きたいのはなんで俺がこんなのを・・・!!」
 言いながらイザークはアスランの衣装を取り上げると確認する。アスランの最後のパーツはキバだった。
「貴様はドラキュラ・・・? ふざけんなっ」
 ドラキュラに決まった経緯を考えれば嬉しくなんてないのだが、それでも女装に比べればましだから反論はできない。
「いや、だから、ミゲルが決めたから俺は知らなくて・・・」
「だからってな!」
 イザークがアスランの襟首を掴んだときだった。
 ピーピーピーピー!
 レシーバーが受信を告げる音を立てた。
「何・・・」
「あ、ニコルたちが最終ポイントからゴールに向かってるって・・・」
 遅れていたはずのニコルたちがスパートをかけたらしい。
「行くぞ、アスラン!」
「えっ、だって仮装・・・」
 驚くアスランにイザークは舌打ちして先をせかす。
「ここまできて勝負に負けるなんて冗談じゃない!証拠写真だけとっとと撮ったら捨ててやる!」
 最終ポイントは寮のトレーニングルームだった。それは最初から決まっている。だからイザークはそこへと走り出す。
「でも・・・」
 カボチャパンツだぞ。
 イザークがあれを履くって?
「つべこべうるさい!早くしろ!」
「あ、待って」
 アスランはイザークに引きずられるようにして屋上を後にする。
 イザークのカボチャパンツがいよいよ近づいていた。


 どうやらニコルたちより先にたどり着いたらしいトレーニングルームでイザークは証拠写真撮影用のカメラを確認すると一気に着ている制服を脱ぎ始めた。上着を脱ぎ捨てて頭から黒い上着を勢いよく被る。
「イザーク」
 アスランは心配になる。
 本当にわかってるんだろうか。あれを履くってことを。 
「うるさい、貴様も早く着替えろ」
 いってる間にもイザークはどんどん着替えていく。目の前では上着を被ったイザークが制服のズボンを下ろしていた。
「それ、履くのか」
「仕方ないだろう!それよりとっととしろ、ニコルたちが来る前に」
 イザークの白い足がむき出しになる。それにどぎまぎしながらアスランはのろのろと自分の制服を脱ぎ始めた。 そしていよいよイザークがカボチャのパンツに手を伸ばした。じっと見ているアスランに気づくとイザークは顔を真っ赤にした。
「何見てる! とっとと自分の着替えをしろっ」
「あ、うん」
 そうしてついにイザークはカボチャパンツを身に着けた。
オレンジ色のパンツから伸びる白い足にかぶりつきたい。。超ミニ丈のチュニックが微妙にカボチャパンツを覆っていてそれがなんだか余計にイヤラシイ。アスランは自分の思考回路のエッチ度を棚に上げてそんなことを考えた。
「アスラン!!」
 恥ずかしさで苛立つイザークが怒鳴りつける。慌ててアスランは衣装を着替えた。
 そこにはドラキュラと魔女の仮装をした二人が立っていた。
「証拠写真だ」
 カメラのセルフタイマーをセットするとイザークは不本意120%の顔をして立つ。その横でアスランは切れるイザークにドキドキしながらカメラを見つめる。
 シャッターの音がして無事に証拠写真が撮れた、とイザークが衣装を脱ごうとしたそのときだった。
「イザーク!」
 突然がばっと背後からアスランがイザークに抱きついたのだ。思い切り。
「何すっ、アスラン?!」
「だって、イザークがすごくかわいいから」
「ば、バカにすんな!」
「でも・・・」
 言いながらアスランは無理やりイザークにキスを押し付ける。それにゾクゾクと感じてしまってイザークがぎゅっと目をつぶった。
「アスラ・・・」
 イザークが甘く声をあげかけたそのとき。






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