肩が触れる距離で、まだ呼吸荒くイザークはシーツに包まっている。
けだるそうに額に腕を当てて、てのひらを天井に向けて。
閉じられた目蓋が小刻みに揺れて必死に体の奥に残る熱を追い払っているようだった。
「イザーク」
名前を呼んでみれば、ピクリ、としたあとで緩くサファイアブルーの瞳が現れる。
「何だ・・・」
「いや、呼んでみただけ」
その瞳を見てみたくなって。
手を伸ばして腕の中に白い体を抱きしめると、邪魔そうにしながらこちらに体を傾けて、銀色の髪がさらりと上気したままの頬に零れ落ちた。
それを掬い上げてやると、まだ敏感な体がびくり、と反応する。
イザークの意外なほどの神経の細かさをこういうときに改めて感じるのはたぶん俺がイザークを好きでたまらないからだと思う。
頬に触れた手でそのまま包み込むようにして撫でると、またサファイアブルーが目蓋の下に隠れていく。
その、何気ない仕草にイザークが自分のものであることを感じてしまって俺は、今さっき解放したばかりのイザークがまた欲しくなる。
「キス・・・していい?」
「勝手にしろ」
目を開けることすらしないで、ぶっきらぼうに言うから、それに小さく苦笑してその唇にそっとキスを落とす。
強請るように、ついばむようにして唇を重ねれば、冷めやらぬ体はまた新たな熱を求めて動き出す。
柔らかな唇を押し割って、奥に潜むぬくもりを求めていけば、ぎこちなく、けれど情熱的に絡みつく舌があった。
「ん・・・」
息苦しそうにするイザークを離さないようにきつく抱きしめて、深く犯していく。
直に触れる肌に火照るイザークが伝わる。
ふと、目を開けて見ると、いつもクールなイザークと、淫らに肢体を晒すイザークの間のような夢うつつの表情で求めてくるイザークがいた。
こんなふうにキスしてたんだ・・・。
うっとりと酔うようにして唇を重ねているイザークを観察していたら、パチリと目が開いてキツイ視線と目が合った。
「貴様っ」
ぱたりとキスを止めて逃げようとするイザークをそれでも逃がさないようにする。
「人のこと観察してたのか!!」
やっぱり、見つかって怒ってしまったらしい。
「いや、そんなことないよ」
そうだなんて言ったらきっと今すぐ部屋から出て行ってしまうから。
さっきまでとは違う理由で真っ赤になった頬にキスを押し付けながら、無理やりにイザークを抱きしめる。
「なら、なぜ目を開けていた」
「なんとなく開けただけ・・・イザークも開けただろ?」
そう言ってしまえばイザークは何も言えなくなって黙り込む。
それでも。
「キスをするときには目を瞑るのがマナーだろうが」
一方的に顔を見られていたことが気になって仕方がないらしくて、イザークはそんなことをいう。
「知らなかったな・・・、そんなマナーがあるなんて。だって俺はイザークとしかキスしたことないし」
挨拶のキスならともかく。こんなふうに感情に流されるまま相手を求めるようなキスなんてイザークと以外したことがない。だってイザークは俺の初めての人だから。
「ともかく、二度とこんな真似するな」
ふんっ、と横を向いてしまったイザークに苦笑しながら、損ねたご機嫌を元に戻すために俺はイザークに触れる。
白い体の隅々までてのひらで、指先で、辿るようにしてやれば、すぐにイザークは熱をあげるから。
「・・・ぁっ」
甘く漏れた声にくすりと笑うと睨むようにしてイザークが俺を見た。
「目をつぶれ!」
命令されるまま目を閉じるとイザークから噛み付くようなキスが施される。
マナーは守って。
けれど、激しく。
まるでイザークそのものみたいな口付けは、止まらなくなった熱情を加速させるには充分だった。
fin.
06/01/30