「ディアッカー!!」
ストライクの去った丘の上、デュエルから駆け下りたイザークは転がるようにそこへ走り寄った。ハッチを開く必要もないほど大きく口を開けたそこには、ディアッカのパイロットスーツだったものが焼け焦げて残っていて・・・。
ガバッとイザークは布団を跳ね上げて飛び起きた。
背中にも手の平にもじっとりと気持ちの悪い汗が一面に噴出している。口の中はカラカラに乾いていた。
「夢、か・・・」
また同じ夢を見た。
それはディアッカがいなくなった頃さんざん繰り返し見た夢だった。ディアッカと再会して、終戦を迎えてすっかり見なくなってはいたのだが。
「開戦、したからか?」
自分に問うてみても夢の原因が明確にわかるわけもない。
イザークはゆっくりと起き出すと、シャワーを浴びるべく身につけていたアンダーを脱ぎ捨てた。
軍服を身につけたイザークはアラートルームに来ていた。無重力の空間に漂いながら、目線の先には自らの愛機青いザクファントムの姿がある。その横にはグリーンのザクが収まっていた。
デュエルとバスター、あの頃と同じようにイザークの機体の隣はディアッカのものの指定席だ。たとえそれが他の兵士と同じザクだとしても、イザークの機体の隣には必ずディアッカの機体が並べられるのだ。それがイザークを安心させる。
ストライクの放つソードの軌跡を何度も目の前にして、それがフリーダムへと変わったあとも、自分はそれに何度も息を呑んだ。
実際、ニコルはあの刃に命を奪われたのだ。後にそれが最高のコーディネーターの乗る機体だと知って、自分たちエースパイロットのレベルで、地球軍相手にあんな思いをすることはまずないのだと変な安心をしたものだが。
そしてもう、キラが自分たちに刃を向けることはありえないとわかっていても、それでもイザークはあの夢を見続ける。
どこかでディアッカが死んでしまうのではないかというぬぐいきれない恐怖がずっとまとわりついていた。
一度手の中から失くしかけた、存在のはかなさに気づいてしまったから・・・。
ウィンッ。
ふいにドアが開く音がしてイザークは振り返った。
「ディアッカ・・・」
そこには軍服の上着を形だけ引っ掛けたディアッカがいた。何でここにいるんだというイザークの問いかけ顔に、言葉よりも先に甘い微笑みで応える。
「なんかさ、イザークに呼ばれた気がしてお前の部屋に行ったら、もぬけの殻だったから。ここかと思って」
一般士官の部屋に寝ているディアッカにイザークが起き出したことなどわかるはずもないのに。
まるで魔法だな、イザークはディアッカには聞こえないようにつぶやいた。
「何?」
それに耳をそばだてるディアッカの体を引き寄せると、その胸にイザークは額を押し付けた。
「夢でよかった」
一言だけ吐き出して抱きつく。その意味を理解してディアッカは黙って抱きしめる。
「そんなの夢のままだろ」
「夢のまま・・・そうだな」
夢でさえ苦しくて堪らないのに、あんなものが現実になったら自分はきっと生きていることに耐えられないだろう。
・・・・・・だから。
あれが夢であることを確かめるために、このぬくもりがそばにあるのだ。いまここに。
そう自分を納得させると、イザークはねだるようにディアッカに向けて瞳を閉じた。
END
2005/3/10
あとがき
拍手SSなのにうまくかけたなぁと一番気に入ってる作品。
シリアスなのに、なんとなく甘い感じと、
場面の展開がすんなり収まったな、という感じで。
うまくシーンを切り取ったなぁと自画自賛な作品。
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拍手SSなのにうまくかけたなぁと一番気に入ってる作品。
シリアスなのに、なんとなく甘い感じと、
場面の展開がすんなり収まったな、という感じで。
うまくシーンを切り取ったなぁと自画自賛な作品。
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