宇宙の沖へ






「さみしくはないのか?」
 AAの展望デッキで漂うディアッカに話しかけてきたのは、いまや自分と揃いのオーブのジャケットを身につけたアスランだった。
 言っている内容が何をさすのかはディアッカにもわかっている。
「まぁ・・・な」
 言い方はあいまいだ。
 ZAFTのころとは違って、階級もなく、ナチュラルもコーディネータもなく、同じ目的のために集った人たち。
 それは少し前の自分には想像も出来なかった世界だが、それはそれで心地いいものだった。
 ただ同時に寂しさを感じるのも本当だった。
 少し前まで自分にもいた同じ目的のために共に戦っていた仲間の存在がここにはなくて。
 むしろ敵対する立場になってしまったことは紛れもなく真実だったから。

ディアッカは遠く、プラントに続く宇宙を眺めながら、銀色の髪の少年を思った。
「でもさ」 
 ふいにディアッカは続けた。
「もし、MSで会ったとしても、お前とキラみたいに、話せないわけじゃないと思うし」
「そうか?」
 根拠もなく言っているディアッカにアスランは不思議そうな顔をして言った。自分とキラだって何度も話そうとして、引き裂かれたことはまだ記憶に新しいからだ。
「だって、考えてみろよ? あのイザークだぜ? バスターで出てったら、『きさまーっ』とかって通信チャンネルフルオープンにして食って掛かってくるんじゃねー?」
 その様子にアスランはまるで目に浮かぶようだと笑った。
「ああ、そうだな」
 肯定は、ディアッカへの気遣いの現われで。
 引き離された友の存在と、その苦しみは嫌というほど分っていたし、それが他人にはどうすることも出来ないことだとも知っていたから。
 離れ際に軽く肩を叩くと、大きく床を蹴ってアスランは言った。
「寂しくなったら俺が相手してやろうか?」
 冗談ぽく、紺の髪の少年はウインクをして遠ざかる。
「は、冗談っ。あとでイザークに浮気したって殴られるからなっ」
「たしかに、それは俺もごめんだな」
 笑いながら背を向けて、その姿が小さくなっていく。
 その姿が完全に消えるとディアッカは、再び窓の外を眺めた。
「イザーク」
 あいつは寂しがりなのに、自分のような気の置けない仲間もいないで一人になってはいないだろうか? 
 強がって部屋で泣いたりはしてないだろうか。
 
 考えるときりがない。抱きしめたい想いは次々と溢れてくる。
でも。
ディアッカは目を閉じて深呼吸をした。
またいつかこの手に彼を抱きしめるときまで、キスはしばらくお預けだな。
せめてこれが届くといいなと思いながら、ディアッカは自分の唇に触れて、
果てない宇宙の沖へ向けて短く口付けを放り投げた----------。




END







2005/2/13

あとがき




この作品は、結構気に入ってます
あと1本SSがないと拍手には足りないーと思っていて
ディアイザだらけで他になにかないかなと考えていたら
AAのディアを思い出して、そこへアスランを絡めてみました。
あまり見ない取り合わせだけど、スラスラ書けました。
しかもイザがいないのにディアイザというのがなかなかいいなと思ってます。
甘くはないけど、ラブラブだなと自己満足な作品かも(笑)


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