きみに似合う色




「お前の肌にはその色が合ってるな」
 シャツの開いた胸元に落ちたそれをみて、イザークは言った。
 
 イザークの髪の色に瞳の色。それをかたどったペンダントヘッド。
 それがオレの肌に似合うって?
 優秀なくせに、自分の発言がどういう意味を持つのかあまり深く考えていないってことにオレはいとおしさを抑えきれない。
「イザークって、案外間抜けだよな」
 胸の中に抱きしめた恋人に向かってオレは言う。
 その発言にちょっとむっとしたようにイザークはオレを見上げきた。
「何がだ」
「だってさ」
 言いながらオレはシャツのボタンに手を掛ける。ゆっくりとそれをはずしながら胸元に唇を忍ばせて・・・。
「このプレートの色がオレに似合うっていうことは、お前の髪の色がオレの肌には合うってことだろ?」
 言いながらキスをする。
 言われた内容を理解してイザークは慌ててオレを剥がしにかかる。
「べ、別にそういう意味じゃ・・・!」
 見下ろす瞳には慌てた色が浮かんでいる。
 そこに冷静な隊長の姿は見る影もなくなっていて、腕の中の、いつものオレだけのイザークの顔になっている。
「じゃぁどういう意味?」
 意地悪く聞き返す。自分のプレートチェーンを引き出して、揺らしながら。
「それはそのまま、その色の感じが・・・」
「だよな?」
 そのチェーンのプラチナのトップがイザークの肌に落ちるように、そっと近づきながら耳ともでささやく。
「ほら。プラチナだとイザークの白い肌には映えないだろ?」
 首を傾けてそれを見ながらイザークはしぶしぶというように認める。
「まぁな」
「逆にイザークの白い肌にはこの色が合うと思うんだけど?」
 言いながらゴールドのプレートを持ち上げる。
「それはまぁ・・・」
 言ってしまってからイザークは気がついて言葉を止めた。
 その表情がかわいくて、抱きしめてキスをする。
「だからね」
「だから、なんだ?」
「肌の色もそうでしょ。オレたちは対照的だけど、だからきっとさ」
 こうしてオレに抱かれてるお前っていうのは、きっとすごくきれいなんだよ、とは言わずに。
「オレとお前はお似合いだと思うんだけど?」
 冗談っぽくウインクしてみせた。
 するとイザークはオレの髪に指を絡ませながら言った。
「お似合いなんてしらないけどな。俺はお前の髪の色は好きだ」
 それは彼の最高の褒め言葉だから、きみに似合う色を持って生まれたことに少しだけ感謝して。
 お互いの色が混ざり合うほどに熱い口付けをした。



 

END

 
 
 
 
 
 
 
 
2005/2/13






あとがき

バレンタイン作品の続きみたいになった作品。
本編でも続きをあとで書くような振りをしてますが、
これで一本書くのは難しいかもとSSにしてみました。
このあたりからSSらしい文体をあまり意識しなくなったなぁという分岐点でもあります



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