好きなもの


「銀の髪」
「蒼い瞳」
「きれいな鼻筋」
「淡く染まる頬」
「とがった顎」
「柔らかい唇」
「白い肌」
「細い指」
「負けず嫌い」
「頑固」
「短気・・・」

 つぶやきながら、裏庭の芝生の上に寝ころんでキーボードを入力していくディアッカのモニターに影がさす。
 見上げるとそこには銀髪の少年。
「なんだ、それは」
 ぶっきらぼうな言い方はいつものことで、入力していた内容とは関係がないけれど。
「入隊前に提出する書類だって。嗜好の欄にさぁ、書いてるんだけど。イザークって固有名詞は使えないからさぁ」
 言った途端にぶちきれた。
「そんなものに、なんてことを書くんだ、お前はっ」
 けど、そんなのは予想の範囲で。
 取り上げようとする手を払いのけると、逆に細い脚を引っ掛けて引き倒した。
「くっ!」
 悔しがるイザークは、何よりオレの大好物で。
 逃さずにそれを捕獲する。
 がしっ、と後ろから抱きしめて。
 その肩に顔をうずめた。
「あんなもの消せ!」
まだ言ってるイザークがかわいくて。
ついいじめたくなる。

「じゃぁ消す代わりにキスさせて」
「なっ!ばか言うなっ」
 手足をばたつかせるイザークはそれでもきっと本気じゃないから、 オレの腕の中にいるまま。
「銀の髪」
 言いながら背後からその髪にキスをする。
 その上半身を膝の上に倒して抱き止めながら、片手でモニターの文字を1つずつ消していく。
「蒼い瞳」
 言って閉じられた瞼に軽くキス。3文字消えて。
「きれいな鼻筋」
 なぞるようにキスを滑らせて。6文字消して。
「淡く染まる頬」
 ホントにその色になってきたのを確かめながら。次は6文字。
「とがった顎」
 伝いながら喉元への口付け。ゆっくりと4字。
「白い肌」
びくり、と小さく震えた体に思い切り笑顔を向けながら。三字削ってみて。 
「細い指」
 そして腕を取り上げて、その先を軽く口に含んで。一度に3マス遡って。
「負けず嫌い」
 ささやくように耳元に寄せて。最後から5文字。
「頑固」
 言いながら、耳朶に舌を躍らせ。二文字を削除。
 顔を真っ赤にしながらも、イザークは平気なフリをしている。
「柔らかい唇」
 指でそれに触れながら、そっと吸いつく。順番に5文字。
 そしてそのまま深くむさぼる。
 ぎこちなく、絡めてくる柔らかな舌。ぞくぞくする感覚にますますそれを求めていって。
 いつまでもその感覚に浸っていると。
 やがて限界を超えたイザークから細く声が漏れてきて。
 慌てて下からオレの体を突き飛ばして無理やりに離れた。
「いいかげんにしろっ」
「短気」
 笑って残った文字を消した。
「もう時間だ、とっとと戻れっ」
 言うとイザークは慌てるように立ち上がって歩いていく。
 その姿を下から見上げながら、オレはモニターに目を戻すと一文字「Y」と記入して送信ボタンを押した。
 そしてイザークの後を追って歩き出す。
 
 オレの好きなもの、それは目の前にある彼の背中。





END

 
 
 2005/2/13
 
 
 
 
 
 
 
あとがき
 
 
 SSになりそうなシーンを必死に考えて思いついたのが、
 アカデミーのワンシーン。その中で「昼休み」と「芝生」をキーワードに
 考えたのがこんな話です。
   あまり深く考えずに最初の単語を羅列したら、そこからなんか変な方に進みました(笑)
 けっこう、この話は好きだという感想を頂いて、深く考えないのはいいことなのかと
 謎が深まった作品(笑)
 SSとしては2本目に書いた話。
 
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