「痛っ・・・。イザーク、爪伸びてんじゃない?」
言うと、自らの細い指先をじっと見つめて言った。
「確かに。最近忙しくて切ってなかったからな」
そしてベッドから立ち上がる。
「オレが切ってやろうか?」
爪切りを持ち出したイザークに言う。
「いらん。そんなこと頼みたくもない」
「あっそう」
そうしてラグの上でパチンパチンと爪を切り始める。
暇になったオレはしばらくその姿を眺めていたけれど、ある事を思いついて床に下りる。
足の爪を切り始めたイザークの背中に、同じようにして床に座りながらぺたり、と背中をくっつける。
「・・・何してるんだ」
「別に。座ってるだけ」
「なら離れろ。なんで背中をつけるんだ」
口調を荒げるイザークにオレは構わずに背中を押し付ける。
「したかったから」
「なんだ、それは」
「邪魔してるわけじゃないんだから、いいだろー?」
「充分、邪魔だっ」
言ってイザークはそのままの姿勢で床を移動してオレの背中から逃げる。
「何だよ、それー」
言いながらオレはその背中を背中で追いかける。
ぴたり、と張り付いた背中にイザークはさらに動いて逃げる。
「しつこいぞ、お前」
「イザークこそあきらめ悪いよ」
そうして数度、追いかけっこを繰り返して。
それでもずっと追いかけるのをやめないオレに、あきれたようにため息をつくとイザークは黙って作業に戻った。
時折、パチンパチン、と音がして、オレは黙ってそれを聞いていた。
しばらくして、爪切りなんてとっくに終わったはずなのに、
イザークは立ち上がろうとしないから、不思議に思って肩越しに振り向いてみた。
すると、自分の膝に顔を乗せるようにして目を瞑っているイザークがいた。
その手が無造作に床に置かれていたから、そっと重ねて握り締めてみたけど、イザークは何も言わなかった。
オレの手の中でイザークは手を丸めて握る。
しん、とした部屋の中。
背中越しに伝わる体温は暖かくて。
ドクドクという鼓動が直接に届いて交わるようで。
ただ、なんとなく、そんなことが幸せだった。
2005/4/20
密着度の高い話。
今回の拍手SSで一番人気がありました。
あんまり中味がないと思ってたので、意外な気がしました。
歳相応に幼い二人ががほのぼので癒された、という声を頂きました。
これが発展して、爪切る話ができました。
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あんまり中味がないと思ってたので、意外な気がしました。
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