Cockpit

 狭い空間に二人の声だけが響く。
 「おまえ…」
 
   AAのデッキに半壊したバスターを運び込んだのはイザーク。
 二人がいるのは、戦闘で傷ついたデュエルのコクピット。
 やはりナチュラルからするとイザークの容姿は飛びぬけて目に付くらしく、
 正規の地球軍のような嫌悪の色ではないにしろ、
 コーディネータを見る好奇の視線に弱り果てたらしいイザークは
 なかなかそこから降りてこようとはしなくて。
 だから。
 簡単な手当てを受けたオレはすぐさまデッキに戻って。その姿を求めた。
 「ちゃんと手当て受けてきたぜ」
   
 イザークは、着艦してすぐにバスターのコクピットを覗き込んでオレの様子を確認した。
 そして、たいした傷ではないとわかった途端に
 「とっとと手当てを受けて来い」
 と、依然とまったく変わらない口調でオレに命令した。

 その姿を久しぶりに見たのに。
 なんだか当たり前すぎておかしくて。
 怪我をしてるオレは笑ってしまってイザークにまた叱られた。
  
 オレの額の包帯を一瞬だけ見てすぐに視線を作業にもどす。
 「バスターはもうだめだ」
 「ああ、そうだろう」
 言いながらイザークは計器をチェックしている。
 「オレももうだめだよ」
 「な・・・に?」
 その青い視線がこちらに向いて。
 あまりに真剣に凝視してるから、つい表情がゆるんでしまって、
 ごまかすように抱きしめた。
 「イザークと離れてらんないよ。ずっと会わなかったら苦しみも麻痺したかもしれないけど」
 言って、その瞳を見つめる。
 怒ってる? 困ってる? 
 「こんな近くにいるじゃん」
 言いながら手を伸ばしてコクピットのハッチの開閉ボタンを押した。
 プシューという音と同時にしまる扉。
 「会いたいとか、抱きしめたいとか・・・とにかくもう・・・」
 その人をぎゅっと腕の中に閉じ込めた。
 「イザーク、イザーク・・・」
 「勝手なことを・・・」
 内容とは裏腹に口調はとても穏やかで。
 オレの体を引き離しながら。
 「お前ばかり言うな、俺は一人になったんだからな」
 睨む瞳は気のせいじゃなく、どこか潤んでいるようで。
       
 狭いコクピット。
 でもきっと、二人で抱きしめあうには十分な空間で。
 今度は。
 どちらからでもなく抱きついて、お互いに深く深く唇を重ねた・・・・・・。
                  
                  
                  
 END
                   
 
 
 
 
2005/2/4 



あとがき

この話はショートショートとして初めて書いた作品です。
元ネタはSSではなかったのですが。
拍手用に短く書き直しました。
とにかく文体は短くというのを意識したので、その辺が顕著です・・・
短い中でイザらしさを出すのが大変だなと思った作品でもあります。
今となっては思い出深い作品。


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