「そんなこと・・・知らなかった」
 複雑そうに呟くイザークに、契約のアイスを全種類注文し、たらふく食べたミゲルはニヤニヤと笑いながら見ている。頂くものさえ頂いてしまえばもはや守秘義務なんてなきに等しい。
「でもさぁ、見合いは終わったんじゃないの?」
 確かに見合いの日時は先週のはずだ。あの週末はディアッカが家に帰るといっていたけれど、今日は行き先を聞いていない。それに今日中に戻ると言っていたからただの外出かもしれない。
「父上がらみの用件だと聞いている」
「だってお見合いは父親の命令でしょ。だったらその後のデートも父親がらみってことになるんじゃないの?」
 ラスティの指摘はもっともでイザークは何を言っていいのか黙り込んでしまう。
「でも断るって言ってましたよ」
 最初から断るつもりで、だけど退学はしたくないから見合いに行くのだとディアッカはさんざん言っていた。
「意外とかわいい子だったから付き合うことにしたとか?」
 ニコルのフォローもラスティにかかれば意味がなくなってしまう。
「あいつなんだかんだと女好きだしなぁ」
 ミゲルがそれを言うかとアスランはあきれつつもディアッカの外出の理由がわからなくて首を傾げる。
「何も言わないで出かけたのか」
「何も聞いてない」
 何か聞いてるならこんなに驚いてやしない、と噛み付きそうな視線をアスランに向けた。
「んー、今回のことについてはオレらも何も聞いてないし。直接本人に聞いてみれば?」
 どうせ夜には帰ってくるんでしょ。そう言われたもののイザークはなぜだか頷くことはできなかった。



「早かったな」
 夕飯の時間が終わるころディアッカは寮に戻ってきた。外出時の門限までは二時間もある。
「あぁ結構早く用事が済んだから」
 そう言って私服から制服に着替えるディアッカの脇を通ってベッドに向かったイザークは一瞬足を止めてまじまじとその顔を見つめた。
「あ?どうかした?」
「いや・・・父上とは会ったのか」
 父親がらみというからには顔くらいは見たのだろうと思うのに、ディアッカは曖昧に首をふる。
「直接は会ってないよ。あっちも忙しいし。それより明日のプログラミングの課題って何ページまでだっけ?」
「87ページだ」
「げっ、あと10ページもある」
 慌てて課題に取り組むディアッカの背中にイザークはじっと視線を向ける。
 ディアッカの身体からは普通なら気付かないくらいほんのわずかに女物の香水の匂いがしていた。







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