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ピピピピピッ!
部屋の通信機が派手に着信を告げる。
慌ててディアッカはベッドから立ち上がるとその通話ボタンを押した。
「あぁメールならいつでも、アドレスは同じだから」
言葉少なに答えるとディアッカは急ぐように通話を切った。ディアッカ宛てに通信が入るのは珍しいことだったのに、最近それは急に増えた。
「忙しそうだな」
イザークが言うとディアッカはそ知らぬふりをして振り返る。
「別に、そんなんじゃないよ」
ベッドの上に仰向けになっていつものとおりグラビア雑誌を広げてみせる。けれど、その視線は写真の中の美女じゃなくイザークの後姿を盗み見ていた。
「そういえば、また出かけるらしいな」
昼間ニコルがそんなことを言っていた、とイザークは思い出したように口にする。
「あぁ、ちょっと親父がらみの面倒ごとでさ」
これは嘘じゃない。父親の無理強いで見合いした結果の副産物であって、自分が望んだことではないのだ。
「そうか、父上とはうまくいってるのか」
つい口に出たセリフにディアッカは曖昧に笑う。
「それは変わんないけど、まぁ悪くしないための根回しっていうの?」
結局、見合いの日に実家に帰っても父親と会話なんてなかった。ただきちんと見合いの席に赴いたことだけはチェックしているだろうから、一応の約束は果たしたことになったはずでアカデミーから退学させられることはないだろう。
「よくわからないが、お前が考えていることなら間違いはないんだろう。せいぜい努力することだな」
「あぁさんきゅ」
課題のためにPCに向かうイザークの横顔をみながら信用されてるんだなと思う。間違いはない、というセリフは耳に痛いが、結果的にはイザークのためでもあるのだからと自分に言い聞かせて罪悪感をしまいこんだ。
これはヴィオーラの作戦の一部だった。敵を欺くにはまず味方からの鉄則どおり、同室者にもディアッカの生活が変わったと知らせなくてはならないと彼女は言うのだ。イザークにそこまでする必要なんてあるとは思えなかったけれど、そこは強引に押し切られた。
「せっかくなら恋人気分を味わうのも悪くないでしょう?」
小悪魔みたいに笑う彼女に、だけど不快な思いはしなくてディアッカは渋々アカデミーの連絡先を教えたのだった。
そして案の定頻繁に連絡が入るようになったディアッカに少なからずイザークは疑問を抱いているらしい。今までならディアッカの通信の内容については触れることなどなかったのに、今日はそれとなく探りをいれてきたのだから。
あまり長引かせたらイザークの信用も失いかねない。早めにケリをつけなくては、この我が侭なお姫様が切れたら部屋が散らかるどころじゃすまないはずだから。昨日イザークがアスランとの勝負に負けて床に落ちていたチェスの駒を拾いながらディアッカは内心で小さくため息をついた。
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