supplement
書斎のデスクで仕事を片付けているイザークの後ろでディアッカは雑誌を読んでいる。
甘えたがりのイザークは自分が一人になるのを嫌う。
たとえ一人で仕事を片付けているとしても、そばにディアッカがいないと途端に仕事が手につかなくなる。
だから、ディアッカは文句も言わず同じ部屋で時間を潰すのだ。
もちろん、自分に手伝えることがあれば手は貸すし、コーヒーを入れたり肩をマッサージしたり、してやれることはいくらでもしてやってはいる。
だが、イザークが一番欲しているのはそんなことじゃなかった。
「ディア!」
突然名前を呼ばれたディアッカは雑誌から目を上げた。
デスクチェアで大きく伸びをしながら反り返っているイザークの姿がある。
「疲れた?」
立ち上がりながら、ディアッカは問いかける。
もう1時間以上かじりついているのだ。いくらイザークでも集中力はそうそう持たないだろう。
「疲れるに決まってるだろっ」
頭をぐっと後ろに下げて、顎を突き出した姿勢でイザークは言う。
「今日はもうやめたら?」
無駄と知りつつディアッカは提案する。
「明日までに片付ける仕事なんだ」
不機嫌を顔中に表現したイザークは渋い顔で、そんな締め切りでなかったらとっくに放り出しているとでも言いたげだ。
そんなイザークの脇に立って、その頭をなでながらディアッカはよしよしとなだめにかかる。自分が手を出せない以上、イザークにがんばってもらうしかない。
「わかったよ、エネルギー補給してやるから」
そういうとイザークの顔を抱き寄せてキスをしてやる。イザークもそれを待つように、瞼を閉じた。
深い口付けにイザークは両手を挙げるとディアッカに抱きついた。
柔らかな舌の動きに絡みつきながら、体中の力が抜けていく。じわじわと生まれる熱に夢中になってそれを追う。
ディアッカもイザークの体を抱きしめながら、その甘い熱を奪い取るように深く口腔を味わった。
口の端から甘い液体が滴り落ちると、それを合図にするように二人の交わりは終わりを告げた。
「ぅん・・・・・・」
名残惜しそうな声色にディアッカは最大限に自制をしながら、イザークの髪の毛をぐしゃぐしゃとなでる。
「ほら、充電完了。早く片付けちゃえよ。待っててやるから」
そういうディアッカを恨めしげに見上げながら、イザークはその手を引き寄せるともう一度短いキスをねだった。
ちゅっ。
ディアッカが音を立ててそれに応えると、改めて背伸びをしなおしてイザークは書類の山に視線を向きなおす。
その後ろではやれやれという表情でディアッカがソファに座りなおした。
イザークは疲れがたまってはかどらなくなると、キスを欲しがるのだ。疲労困憊の脳をリフレッシュするのにキスがいいのかどうかは知らないが、とにかくそれで気分転換を図っているようで、それがいつになるのかわからないから、いつもディアッカはそばにいるのだ。
ま、キスできるのは嬉しいけど、切り上げないといけないのは問題だよなぁ、とディアッカは思いながらそばに置いた雑誌に手を伸ばした。
END