KIRA(仮)
 MSデッキで並ぶフリーダムとジャスティスの機体を前に、アスランはキラとお互いの今までのことを話していた。
「Xシリーズのパイロットってアカデミーの同期なんだ?」
しつこくアークエンジェルを追っていたクルーゼ隊の話になると、興味深そうにキラが身を乗り出した。
「ああ、ヘリオポリスに潜入したメンバーのほとんどが俺と同期のエースパイロットだ」
 思い出すのに少しつらそうな顔をしてアスランは続ける。
「俺とディアッカとラスティとイザークとニコルと・・・」
 ニコル、の名前に今度はキラが一瞬反応した。けれどすぐに別の興味を示す。
「え、ディアッカもなんだ?」
 奪い取ったバスターをその場で乗りこなす技術からしてコーディネータでも相当なレベルだと思ったが、アークエンジェルでの彼の言動を見ているとまるでそうは思えない。キラの軽い驚きはそう物語っている。
「まぁね、あいつはぎりぎりだったけど。イザークに散々言われて引きずられてたからな」
「イザーク?」
 聞きなれない名前にキラが聞き返した。
「デュエルのパイロットだよ。エリート意識の塊みたいな奴でさ、なんていうか、俺のことを目の敵にしてたっていうか・・・」
 苦笑しながらアスランは思い出している。
「とにかくまっすぐな奴で、わかりやすいんだけど。すぐ切れるんだよ。あれがなければなって思うけど。まぁでも、俺にとってはあいつの性格がうらやましいかな」
 人のことにあまり関心のないアスランがうらやましいなんていうイザークという少年にキラは興味をもった。
「そのイザークがディアッカを引きずったって?」
「あいつら昔から知りあいらしくて、部屋も同室だったから。ディアッカのことをまじめなイザークがいつも説教してて」
 何度廊下でイザークの説教から逃れてくるディアッカと遭遇したことか、アスランの口元に苦笑が浮かぶ。
「まぁ、ディアッカもやればできるくせにやろうとしないから、それが余計にイザークの気に障ったんだろうけどな」
 その言葉にキラは妙に納得する。今の説明と今までのデュエルとの戦闘から察するイザークという少年のまっすぐでアツい性格では、飄々としたディアッカの言動にはイライラさせられるに違いない。
「でも、なんだかんだと二人は仲いいんだけどな」
「じゃぁディアッカはそのイザークのことが好きなんだね」
 唐突にキラは言った。アスランは面食らう。
「は?なんでそうなるんだ、キラ・・・」
「だって、アスラン、昔は僕のことさんざんお説教してたじゃない? でも僕はそれがうれしいっていうか楽しいっていうか・・・そういうのに甘えてたから」
 突然の告白に目を白黒させるアスランとキラに気がついたディアッカがドリンクを片手にやってきた。
「何話してんだよ? 楽しそうだな」
「ねぇディアッカってイザークのことが好きなんでしょ?」
 ベンチに座るなりキラがいきなり切り出した。
「・・・っへ?」
 油断してるところにいきなり言われて、ディアッカの表情が一瞬固まった。
しかし、驚くアスランの前で予想に反してその表情がみるみる柔らかくなる。
「まぁね」
 否定しないどころか肯定して、さらにキラに向けたディアッカのやわらかい顔をアスランは今まで見たことがなかった。
 いつも自分が一番で尊大なイザークにつかず離れずな感じで、いいコンビだとは思ってはいたが・・・。
「美人なの? イザークって」
「そういったらあいつに殺されるけどな」
 キラに聞かれて楽しそうに話しているディアッカの顔はなんともいえない表情だった。
 そーいうことか。アスランは納得した。仲がいいのか悪いのかよくわからない二人は、ただの同僚ではなかったというわけだ。
「もちろん、両思いなんでしょ?」
 キラの追求は容赦ない。けれど、不思議とキラには人の警戒を解いてしまう独特の雰囲気がある。ディアッカも出会ってすぐにそれにやられた人間だ。
「さーなっ」
 はぐらかすディアッカの顔は、ありありと余裕に溢れて何より明白な答えだった。
「アスラン、気がつかなかったの?」
 急に矛先が自分に向いてアスランは慌てる。
「え、あぁまぁ・・・」
 すると横から助け舟を出したのはほかならぬディアッカだった。
「こいつは、どっかの誰かのことが気になって他の人間に興味なかったみたいだぜ」
 くっくっと笑いながらキラのほうを見やると、アスランと違って勘のいいキラはにこやかに笑っていた。
「そっか」
 自分の言動をそう分析されてしまうとアスランとしては反論したいところだが、キラがすんなり納得して話が終わってしまった。だが、自分と同じようにディアッカがイザークを思っているのだとしたら、今離れている状況で、笑っていられるものなのだろうか。ふとアスランは疑問に思った。
「ディアッカはZAFTに戻るつもりなのか?」
 この先どうなっていくのかまるでわからない中で、アスランとディアッカが脱走兵であるという事実だけは確かで。そしてイザークがそこにいる以上、彼のそばにいることを望むならば、裁かれることは避けて通れないだろう。
 するとディアッカはやや表情を強張らせながら答えた。
「わっかんねーけど。あいつは絶対オーブになんか来ないだろーし。そしたら戻るしかないんじゃねーの?」
 たとえこの罪を問われることになったとしても。それでも彼のそばにいたいから。
言葉にはならない彼の決意を感じ取ってキラが笑った。
「いざとなったら僕がデュエルごと攫ってきてあげるよ」
 華奢な印象の少年がいとも簡単に言い切ったその言葉に、元赤服の二人は同時に笑い出した。
「それ、洒落になんねーから! あいつブチ切れるって」
「やめておけよ、キラ。MS降りた瞬間に殺されるぞ」
 その二人の様子にキラはきょとんとした。
「え、イザークってそんな人なの?」
 ようやく笑いを収めながらアスランが答える。
「短気を絵に描いたようなやつだよ。な、ディアッカ」
「ああ。でもまぁ、どーにもならなかったらそれもいいかもな」
 そういうディアッカにキラはとどめの一言をこぼす。
「ディアッカってそういうのが趣味なんだ・・・」
 その言葉にさらにアスランは爆笑し、ディアッカはドリンクパックを握りつぶして中身を噴出した。
「でも、ま、いつかこの戦争が終わったら、キラにちゃんと紹介するからさ」
 それまでお互いに無事でいようと、3人は言葉もなく祈り、笑いあった。



END



2005/3/26 手直し




ちょっと気まぐれにUP
すぐ削除かも。
タイトルは仮。