伏せられたディアッカの目元をじっとイザークは見つめた。まさか薄目を開けて見るなんて事はしないだろうとは思いつつ、それでもこいつのことだ油断はできない、と。けれどそんな考えは一瞬でどこかに行ってしまった。自分はいつもディアッカに対してこうも無防備な顔をさらしていたのかとイザークは思うほど、ディアッカの表情は甘く酔うようで、まるで警戒などカケラもなかったからだ。
 それに気づいてまた心臓が早鐘を打ち始める。キスなんていつだってしてるのに、自分からするなんて、しかもその顔を見てやるなんて。ばかなことを言うんじゃなかった。そう思いながらも、自分は確かにいまディアッカにキスをしたくて、その唇を吸いたいと思って・・・。
 ゆっくりと見下ろしながら顔を近づけるとディアッカの意外に長いまつげがすぐそこにあった。
 ディアッカの首にイザークの腕が回されて、顔が引き寄せられる。少しずつイザークが近づいてくる気配がしてディアッカは自然と顎を傾けた。本当に観察でもしているんだろうか、イザークはなかなかして降りてこない。
ふいにイザークの髪がディアッカの頬に触れた。ディアッカはイザークを抱く腕に力を込める。次の瞬間、熱い吐息と同時にディアッカの唇はイザークによって奪われた。
 ぎこちないキス。けれどそれは深く熱い口付け。たどたどしい動きの舌が、ディアッカの中へ侵入し、ねっとりと熱を増していく。慣れない動きながら、懸命に歯列をたどる動きに、ディアッカはぐらりとした。いつもは自分がしていることだし、それに比べればイザークのしていることなんて足元にも及ばないような未熟さなのだが。受身になってみるとそれはそれでなかなかに刺激的だった。
 けれど。我慢はそこまでだった。それまでイザークに任せていた舌の動きに、覆うようにディアッカは舌を激しく絡めた。
「ん・・・っ」
 とたんにイザークの口から甘い声が漏れる。形成は一気に逆転した。
「ねぇ、キスしてみてどうだった?」
 耳元にキスをしながらディアッカは訊いた。その耳朶は真っ赤に染まる。
「知るかっ」
「だって見たんだろ?」
 言いながらさらに耳に息を吹きかける。
「っ、お前っ・・・」
 敏感に反応したイザークはぎゅっと目を瞑った。
「イザークは素直じゃないからなぁ」
 甘く舌を絡めながらディアッカはイザークを抱きしめる。
「しあわせ、って思わなかった?」
 除き込むようにディアッカは言う。
「・・・お前は思うのか?」
 聞き返すイザークにディアッカは思い切り甘い笑みを返す。
「思うよ。こんな顔してるのを見られるなんてオレって幸せって、ね」
「じゃあお前の負けだ」
 得意げに言うイザークにディアッカは眉をひそめる。
「なにが負けなんだよ?」
「俺はお前を幸せにしてやってるんだからな!」
 結局勝ち負けかよ、と小さくため息をつくとディアッカはイザークの体を抱き上げた。
「うわっ、お前何するんだ」
「このままベッドまで運ぶんだよ」
 しらっとしてディアッカは言う。
「何言ってるんだ、ディアッカ、おい」
「オレに抱かれたら、勝ち負けなんて言ってられないだろ。だからだよ」
 意地悪く言いながらキスをする。それをイザークは避けるでもなくて。
「それでも俺の勝ちだぞ、ディアッカ」
 不思議なくらい強気に微笑んだ。
「だってお前はいつも俺にキスしたいって思ってるんだろ?」
「あぁ?」
「だったらそれはお前が俺に参ってるって証拠だからな!」
 その顔にディアッカは苦笑した。
 じゃぁキスしたいって思ったお前はオレに参ったと思ったのかよ、と訊きたいのを我慢して「はいはい」と降参しながらディアッカは、ゆっくりと甘やかに目を閉じた腕の中のイザークにそっと深い口付けをした。





END






2005/3/12





あとがき。

10000hit記念に書いてみました。
1000、5000と同じく「キス」をテーマにしてみましたが、
最近は長文病なのでどうもまとまりがなかったですね・・・。
タイトルはあまり意味ないし・・・;
なんだかんだと、結局バカップルです、こいつらは!(笑)
でも、そんな彼らが大好きなんです!
それにしてもキスばかりしてますね・・・。
私はどうやらちゅー好きなので、きっと今後もちゅーオチが多いですw。
こんな私ですが今後ともよろしくお願いします。