ZAFT軍事ステーション。
その廊下を歩く二人の人影がある。
前を歩くのは隊長クラスの白い軍服を纏い、プラチナの髪をキレイに切りそろえた色白の人物。その後に付いていくのは一般士官服に、浅黒い肌、金髪のすらりとした青年だった。
前を歩く青年は、つかつかと早足でまるで何かに腹を立てているようなそぶりで、その後ろの青年はそれにあきれながらもおとなしくついていくといった風だった。
シュンッ。
あてがわれた自室のドアを開けると白服の青年はズカズカと部屋に入っていく。金髪の青年もそれに遅れて入りながら、やれやれといった感じで髪の毛をかきまぜた。
「おい、さっきのあれはいくらなんでもやりすぎだろ・・・」
廊下で艦隊要員に噛み付いたイザークはそのときの怒りそのままに顔をゆがめている。
「うるさいと言っただろう! 地位ばかり高くて無能な奴が多いから、こんなことになるんだ!」
いきり立つイザークに、ディアッカはため息をつきながら聞き返す。
「こんなことって?」
自分の言ったことを理解しないディアッカに苛立ちの矛先を向けながら、イザークは言う。
「連合を抑えられないばかりか、今度はロゴスを撃つだと? そんなこと簡単にできるわけないだろうが」
イザークの主張に困ったような顔をしながらディアッカは口を開く。
「そりゃ、そーだけどさ。議長だって簡単だからって言ってるわけじゃないだろ。難しいけど間違ったことを言ってるわけじゃないとオレは思うぜ」
副官が簡単には同意してくれなかったことで、イザークの怒りは収まる気配が見えない。
「だが! 俺は隊長で、部下を率いているんだ。その俺自身が納得できないでどうして部下を戦場へ送り出せる? 難しいだとか簡単だとかいうだけの話じゃない。これが本当に戦争を終わらせるために正しいことなのか? 俺はそれが知りたいんだ!」
「イザーク・・・」
上官の胸の裡を理解したディアッカは声のトーンを落としてその名を呼んだ。
「・・・俺だってわかってる! 軍人である限り、命令は絶対だということはな! だが、
命令のままに信じて疑わなかったことで、犯した罪を背負ってるんだ、俺は!・・・・・・お前のように、自分の意思で行動することを選ばなかったからな・・・」
自分を貶めて言うイザークに今さらながらディアッカは彼が抱え続けてきた、軍人としての胸の痛みを知った。
「そんな言い方するなよ・・・」
ディアッカだって後悔が全くないか、と問われればYESとは言えないくらいには悔いているのだ。自軍を裏切ったこと、そして何よりイザークを一人にして敵対する立場になってしまったことを。その道を選んだ自分を。
「すまない・・・」
切なげなディアッカの言葉にイザークはぽつりと謝った。怒りの感情はすでに収まっている。
「謝らなくてもいいけどさ・・・」
言ってディアッカはイザークの体を引き寄せると抱きしめた。
「オレらは軍人だからさ。軍人としてできることをしようぜ。・・・この立場にある限りはな」
「ディアッカ・・・」
緑色の軍服の肩に頬を落としてイザークはうなだれる。
「お前がZAFTにいるならオレもいる。お前がZAFTをやめるっていうならオレもやめる。・・・オレはイザークのそばにいるって決めたから」
抱きしめる腕に力を込めてディアッカは告げた。
そこにある想いにイザークはそっと目を閉じた。
何よりも大切にしたい、二人でいるということ・・・。それは先の戦争で二人が得たもののなかで一番大きなことだった。
「・・・・・・お前、そんなこと言ってると死ぬぞ」
ぼそり、と言ったイザークにディアッカは笑いながら答える。
「イザークの頭が爆発するよりは確率が低いと思うけどな」
覗き込んでからかうディアッカにイザークは堪らず噴出した。
その顔を見つめて副官は嬉しそうに表情を崩す。
「怒ってるイザークもらしくていいけど、やっぱりオレは笑ってる顔が好きだな」
その言葉にとたんに顔を赤くしてイザークは口を尖らせる。
「ばかやろう! 恥ずかしいこと言うな!」
拳を振り上げて殴ろうとするイザークを軽く交わしながら、ディアッカは思った。
軍人としては不謹慎なんだろうけど、戦争なんてどうでもいい。ずっとこのままイザークのそばにいられるならどんな敵がどう示されようが、疑うことなく撃ってやる、と。今日の仲間が明日には敵になったとしても、それがイザークの決めたことなら、たとえそれが自分と関係のある人であったとしても、きっと自分はただこの人のために、この人といるためにどんなことだってするだろう、と。
END
2005/6/20
35話の勝手な補完。
そして終わりが・・・チューを抜いたらまとまらず(苦笑)。
話が進んで矛盾しないことを祈りつつ。
賞味期限が短そうな話だ・・・。
そして終わりが・・・チューを抜いたらまとまらず(苦笑)。
話が進んで矛盾しないことを祈りつつ。
賞味期限が短そうな話だ・・・。