FAITH
 自分の席でモニターをチェックしていたディアッカはある掲示に気がついた。
「マジかよ・・・」
 つぶやく声は小さかったが、その目は一瞬真剣なまなざしに変わる。
 が、すぐにそれを引っ込めて、いつものように席を立つと上司の執務室に向かった。

「イザーク?」
 ノックもせずに上司の部屋のドアを開ける。
 そこでは先ほどのディアッカと同じようにモニターに視線を落としているイザークがいた。
 そのそばに歩みながら、ディアッカは様子を伺う。
「見た?」
 前後の説明を一切省いた問いかけにイザークはうなずく。
「あぁ」
 しばし考え込んだあと、チェアを回転させて副官に向き直る。
「よりによってFAITHとはな・・・!」
 それにディアッカは苦笑する。
 二人が見ていたのは、ZAFTの内部告示一覧。その中に、アスラン・ザラのFAITHとしての復隊が掲示されていた。
 戦没者墓地でそれを強く勧めたのはほかならぬイザーク自身で、それがつい数日前のことだというのに。
 元ライバルは隊長の地位を乗り越えて、特務隊として華麗に戻ってきていた。
「さすがアスランていうか、なんとも、な・・・」
「俺が何とかしてやると言ったのに、何の連絡もなしとはどーいうことだ?!」
 口調だけは厳しいものがあるが、その表情は同僚の復隊にかなり満足しているようだ。
「まぁ、あいつも忙しそうだし」
 アスランがZAFTに戻ったことを自分よりずっと喜んでいるイザークに、形ばかりフォローしながらディアッカは訊いてみる。
「実際、どう?悔しい?」
 あいつがFAITHなんかになって。
 だが、覗き込むブルーアイはなぜか余裕の表情だ。
「別に、関係ない。俺は今の自分にできることをするだけだ。第一、そんな地位になったら副官はつかないだろう?」
 FAITHはどこかに所属するわけではないから、通常は単独行動とされる。
 それを言ってることに気づいて、そしてなによりイザークの言わんとしたことを理解したディアッカは破顔した。
「そーだな」
 ライバルと並ぶエリートの地位よりも、自分とともにあることを大切だとした上司である恋人に。
 自らの誓約の証に抱き寄せるキスは一瞬だけ。
 でも今はそれだけで十分。
 二人は目線だけでやわらかい笑みを浮かべた。







2005/3/18







あとがき


日記で公開していたSSSをこちらに移転しました。
突発的に書き上げた作品。
faithの意味としては

1.(…に対する)信頼,信用
2. (…の)自信,確信;信念
3. 信条,教義;宗教;
4. 義務,責務,誓約,約束
5. (義務の)遵守;(約束などの)履行;信義,誠実

などがあるのですが、3を除いては、
ディアイザ(てかディアッカ)にあてはまるなぁと思って。
アスランがZAFTに対するfaithなら、ディアッカはイザークに対するfaithだよ、みたいな話。