「だが、オレはこの景色を守るために戦う、そう決めたんだ」
強く、イザークは言い切った。
「俺にはそれが出来るからな」
自信にあふれた言葉。ディアッカは彼らしいと笑いながら、そっと腕を伸ばす。
「じゃぁオレは、お前を守るよ」
背中から抱き寄せる。
「不純な動機だ」
きつい口調。でもそこに拒絶の色はない。そのトーンには彼に不似合いな柔らかささえ感じさせる。それを感じられる相手は 限定されてはいるけれど。
「そうか? これ以上ないくらい純粋な動機だぜ?」
自分を抱きしめる腕につかまって、顔は暗闇に向けたままイザークは一瞬ためらった後に切り出した。
「ならば、俺が死んだらお前はどうするんだ?」
思ってもいなかった不意打ち。それにはっとしながらも、ディアッカは思ったままを口にする。
「守るものがなくなったら、戦う意味はないよな。っていうか生きてる意味ないんじゃん?」
その言葉にイザークはかっとなる。
「ばかがっ、何を言ってるっ!」
振り向こうとした白い頬を両手で押さえ、その口を封じてディアッカは続ける。
「ま、そんなことありえないよな。オレがお前を守るって言ったんだぜ? なのに何でお前が死んだ話なんてするんだよ?」
言われたイザークは、自分の言葉がディアッカを傷つけたことに気がついた。この男のことを信用してないわけではないのだが、 漠然とした不安から口を突いて出た言葉だった。
「・・・すまない」
小さくつぶやかれた言葉に、ディアッカは軽く両肩をすくめて息をつく。
必要以上に自分を責めているイザークをぐるり、と振り向かせると今度は正面から抱きしめた。
「いいって。別に」
腕の中で、銀色の髪がさらりと揺れる。ディアッカの胸に頭をもたれて、イザークは目を閉じた。
「礼をいう。今日は・・・その・・・」
言葉に詰まるイザークにディアッカはやれやれ、不器用なお姫様だと思いながら、その額にキスをした。
「楽しかったな、今日は」
一瞬、こわばった身体をさらに強く抱きしめられながらイザークは返事をした。
「あぁ」
「だから、さ。またこういう時間つくろうな。お前とこうして過ごすために、オレはお前を守るから、 お前はお前のやりたいようにしていけばいいよ」
耳元でささやく声にその主の瞳を探す。車のライトを背にしているから、はっきりとはわからないが、そこには甘い笑みが浮かんでいる、 とイザークにはわかった。
「ディアッカ・・・」
「オレはお前についてくから」
ささやきは闇に吸い込まれ、二つの影は重なった。甘い蜜が二人をつなぐ。ぎゅっとその細い身体をかき抱きながら、 ディアッカは時間を忘れてその唇を吸い寄せた。
ふいに、始まりと同じように突然に、街頭がいっせいに明かりを取り戻した。
まばゆい光に、細い腕が自分の背中を抱きとめる。
失くしたくないたった一つの存在。
たとえ、この街の灯がすべて消えたとしても、これだけは絶対に失わない。ディアッカは堅く心に誓う。
やわらかい髪、甘い唇。冷たい頬に、細い肩。すべてが愛おしい、自分だけのもの。
熱く深い口付けはイザークの身体から力を奪う。絡まる舌は容赦なく、まとわりつく。
緩んだ口元から、滴る唾液をディアッカは舌で掬い取る。
「・・・ディア・・・・・・」
しがみつくように自分の二の腕を握り締めるイザークの腰を抱きすくめながら、ディアッカはもう一度、そっと唇を重ねる。
「ずっと一緒にいよう、イザーク」
頷くかわりに抱きつきながら、ディアッカの唇に自分のそれをぎゅっと押し付けた。
それは優しく受け入れられて、イザークはその瞳をうっとりと閉じた。
END
2004/12/28
あとがき
読んでいただき、ありがとうございますっ。
ああ、えっと、なんとか終わりました、というか終わらせました。
最初、書き始めたときは「普通のデート」がテーマだったんですが・・・、
デートの話を書きたかったのに、デートの描写がちから弱いです・・・すみません。
前半は必要ないって気もしますが、ニコルが書きたくて削れませんでした。
軽い悪魔っぷりは楽しかったです(笑)
余談ですが、きっとディアッカの愛読書は「プラントウォーカー」なんでしょうね(笑)。
この話の続編は近いうちにUpしたいと思います。
しかし。よくよく考えると、私の話ってキス落ちですね、いつも。
寸止めってこと? あは、許してください。私には裏は書けないので(苦笑)
読んでいただき、ありがとうございますっ。
ああ、えっと、なんとか終わりました、というか終わらせました。
最初、書き始めたときは「普通のデート」がテーマだったんですが・・・、
デートの話を書きたかったのに、デートの描写がちから弱いです・・・すみません。
前半は必要ないって気もしますが、ニコルが書きたくて削れませんでした。
軽い悪魔っぷりは楽しかったです(笑)
余談ですが、きっとディアッカの愛読書は「プラントウォーカー」なんでしょうね(笑)。
この話の続編は近いうちにUpしたいと思います。
しかし。よくよく考えると、私の話ってキス落ちですね、いつも。
寸止めってこと? あは、許してください。私には裏は書けないので(苦笑)