Prize of winning


 どかっ。
 本を読んでいたイザークの耳に派手な音が響いた。
 ドアを誰かがたたいたのだろうか。それにしては大きな音だったが。

 そう思っているとドアは外から開けられて、そこから倒れこむように人影が舞い込んだ。
「ディアッカ」
 そこにはミゲルたちのところへ行くといっていたディアッカの姿があった。
 その足取りはフラフラとしていて、目つきもどこか怪しい。
「あぁ〜、いざーくぅ〜〜」
 褐色の肌にはわかりにくいが、そこにははっきりとアルコールの気配がした。
 立ち上がるイザークに千鳥足で近づいたディアッカはそのままもたれかかるようにして抱きついた。
「っ!お前酒くさいぞっ」
 ごまかしようもないほどに漂う匂い。そんなイザークの様子にまったく気がつかないディアッカはご機嫌だった。
「いざーくぅ〜。オレ勝ったよぉー」
 自分より若干背の低いイザークにすっかり体重を預けて、ニコニコしながらディアッカは言った。
「何が勝っただ。こんなに酔って。だいたい寮での飲酒は禁止だぞ」
 イザークの怒鳴り声も完全に酔っているディアッカには効果ない。
「あ〜、これはぁーミゲルがぁ持ち込んだ酒でぇー」
「そんなことばかりしてるのか、あいつはっ」
 へろへろとしながらさらにイザークへ体重をかける。たまらずにバランスを崩しそうになって、
 イザークはディアッカごとベッドに座り込んだ。それをいいことにディアッカはイザークになお強く抱きつく。
「みげるとーらすてぃとー勝負したんだぁー」
 そのまま腕の力が抜けてディアッカは崩れおちる。
「なんの勝負だ。どうせまた下らんことなんだろうが」
 しっかりとその体を抱きとめながら、それでもイザークの口調は厳しい。
「ん〜、だーかーらーぁ〜」
 言うとディアッカはイザークの肩に腕をかけ、それを頼りに体を起こすとそのほっぺたにキスをした。 
 酒臭い息がもろにイザークに吹きかかる。
「ばか、やめろっ」
「だぁれが一番、酒に強いかっていう勝負でぇー」
「なんだそれは、ばかばかしい」
 ディアッカはイザークの肩に顔をうずめるようにしている。
「勝った奴がぁ、いざーくにキスしてもらうっていうの賭けてぇ〜」
「なっ…ふざけるなっ!」
 その内容にイザークは絶句した。
 その場にいない人間を賭けの賞品にするとは。しかもキスだなんて、勝手なことにもほどがある。
 怒りに沸騰しそうになるイザークに、ディアッカは相変わらずの調子で続けた。
「でも、大丈夫〜。オレちゃんと勝ったもーん」
「……」
 イザークの反応はない。
 それにディアッカはいじけた様子でつぶやいた。
「なんだよぉー。褒めてくれないのかよー。いざーくのためにがんばったのにぃ。けちぃ〜」
 するとイザークはその白い手を抱えたディアッカの頭に乗せて、よしよしという形容が似合う撫で方をした。
「…よくやった」
 ぼそりと聞こえた言葉にディアッカの顔はぱっと明るくなる。
「…えへへ〜、褒められたぁー」
 また抱きついてディアッカはほっぺたにキスをした。
「こらっ!!」
 怒鳴るイザークには構わずにディアッカは抱きついたままだ。

 そして。
 しばらくして聞こえてきたのはすぅーという穏やかな寝息。
「寝たのか…」
 聞いてもディアッカは答えない。
 もともと酒に強いはずのディアッカがこんな状態になっているということは、相手の二人もかなりな強さなのだろう。
 一体どれほど飲んだのか。
 ディアッカのがんばったという言葉の意味をなんとなく理解して、イザークは短くため息をついた。
 そしてそのままベッドに寝かしつける。
 ベルトとブーツだけははずしてやって、布団を掛ける。
 それでも起きる様子のない金髪の少年にイザークはあきれながらもつぶやいた。
「賞品も受け取らないで寝てるんじゃ意味ないだろうが…」
 しかしディアッカからは寝息しか返ってこない。
 そのままイザークはベッドに座り込んで小さな声で言う。
「受け取れ」
 その唇がディアッカのそれにそっと重ねられた。甘い口付けはアルコールのにおいに包まれる。
 それに苦笑しながら、イザークは立ち上がるとシャワーブースへ消えていった。
 その直後。
 ベッドの中ではニヤける頬と声に出そうな笑いを必死に押さえるディアッカの姿があった------。




 END


2005/2/1





あとがき。



5000hit記念にばばばと突発的にかいてしまいました。
書きながら、ああ、こいつら、こいつら!!とデスクを叩きまくり(笑)
中身がなくてどーにもこーにも(苦笑)
とりあえず、うちのサイトらしく甘めにしたつもりですが、どうでしょう?
タイトルの意味は「勝利の褒章」です。
そして背景はリボンっぽいのを探してて見つけた金と銀! 即採用になりました(笑)

5000hitはもっと時間がかかると思っていました。
思いのほか早く達成できて予想外のことにとても嬉しいです。
つぎは10000目指してマイペースでやっていきますので、
今後ともどうぞよろしくお願いします。