「イザーク?」
 見ていたショートストーリーが終わったのでディアッカはベッドの方へ戻ってきてみると、本を読んでいたはずのイザークは何故だか毛布を被ってスヤスヤと寝息を立てていて、あれほど大事だと言っていた本は脇に無造作に置かれて、ページは閉じられたままだった。イザークはといえば、無邪気に丸くなってすっかり眠りこけていて、ディアッカが起こしても起きそうもないほど熟睡だった。
「冗談でしょ・・・」
 お預けを喰らった次の日にこれはないだろう・・・がっくりと膝から力が抜けるディアッカだったが、寝てしまっているイザークを無理やり起こせばどんな不機嫌になるのかと思うとそれもできるころではない。
「オレってかわいそう・・・」
 小さくそう言ってすっかりその気になっている体をどうしたらいいものかと思い悩むが、考えても仕方がないことで、部屋の明かりを消すとイザークの隣にもぐりこんで、イザークの体を抱きしめた。
「くっそ・・・、あのとき押し倒せばよかった」
 抱きしめて密着した体は否応なく熱を上げるが、イザークはそんなことに気づかないで幸せそうな顔をして腕の中で眠り続けていて、ディアッカはそれに何だかむかついてくる。
「こうなったら、悪戯してやる・・・」
 ささやくように言うとディアッカはその手をイザークの下着の中に忍ばせた。寝ているのなら起きてもらうまでだ、と甘い口づけを施しながら刺激を与えるとイザークの目がうっすらと開いて体が緩やかに反応するのがわかった。
「ん・・・ディア?」
「おはようイザーク」
 嫌味にそう言ってディアッカは、イザークの体の向きを変えると覆いかぶさるようにしてイザークの唇を強引に塞ぎ、漏れる声さえ吸い上げるように舌を躍らせて深く口付けた。
「んんっ・・・」
 抗議するように上がる声はけれど甘さを隠せなくて、ディアッカの手の中でイザークは目覚める体を嫌でも感じてしまっていたので、白い顔が真っ赤に染まっていった。
「寝ちゃうなんて酷いよ、オレ、今日はもう我慢できないからな」
 言ってディアッカがイザークのパジャマを無理やりに脱がすと、サラサラと銀色の髪がシーツの上に散って、白い肌が浮き立つように目に焼きつくから、真っ赤な顔が余計に鮮明になった。
「別に、寝るつもりなんてなかった」
「なら本読み終わったときに呼んでくれたってよかったのに・・・」
 小さな抗議は下敷きになった体から伸ばされて自分の側へ抱き寄せるようにしたイザークからのキスによってふさがれた。
「うるさいな、約束だろっ、ちゃんと守ってやるんだから文句言うな」
 その言葉に満足そうに微笑むと、腕の中の恋人にディアッカは改めて甘く優しいキスを一つする。
「はいはい、わっかりましたよ」
 そしてディアッカの口付けがイザークの体を辿り、イザークはその体をひきつけるように強く抱きしめて、二人の体はシーツの海の中に深く、沈んでいくのだった。





END




2005/10/18



あとがき

お題「風呂上りの二人」です。
今回意識したのは長い修飾文節の多用。
いつもは長くならないようにしているのですが、正反対を目指してみました。
でも、長くてもくどくない、繰り返しにならない文章というのは本当に難しいです。