イザークの足がディアッカの向こう脛を蹴り飛ばし、ディアッカは悲鳴とともにしゃがみこんだ。
「ってぇー! 何するんだよ?!」
 なみだ目で見上げるとイザークはふんぞり返りながら見下ろして言った。
「触るな、とは言ったが俺が触らないとは言ってないからな」
 調子に乗るからだ、と形成が逆転したイザークはすっかり自分のペースを取り戻していた。
「確かにそうだけどさ、蹴ることないんじゃないー?」
「たまたま足しか空いてなかったからな」
 腕を押さえ込んだのはお前だろうが、と視線で言って、イザークはディアッカに背を向ける。
「ちぇー」
 短くつぶやいてディアッカはゆっくりと立ち上がった。ちらりと壁の時計を確かめると声に出さずに口の端を上げて笑う。
「まったく、つまんないゲームなんてするんじゃなかった・・・」
 そうしてディアッカはイザークの肩に手を掛けると体を自分に向けさせて、そのまま唇を奪った。
「!」
 驚いて目を見開くイザークにディアッカはさらにその腰を抱き寄せる。慌ててディアッカを引き剥がそうとするイザークの腕はあっけなく押さえられてしまった。
 長い接吻のあとでようやく離れたディアッカに銀髪を乱した少年はきつい視線を向ける。
「ディアッカ、お前・・・!」
「日付、変わったでしょ」
 壁の時計を指しながらそう言って、ディアッカは改めてイザークを抱きしめる。
「・・・〜っ」
 何もいえなくなったイザークの耳元でそっと低い声でささやきが漏れた。
「イザークに触れられないなんて、ホント地獄みたいだった・・・」
 すぐ目の前にいる愛しい人にお預けを食らうなんて、まったくとんでもない罰だった、とディアッカは笑う。
「思い知ったか、ふん!」
 そう言ってイザークは口を尖らせて、横を向く。
「でもさ・・・」
 ディアッカの言葉にイザークはすぐ目の前のコイビトの顔を見上げる。
「イザークのことがすっげー好きなんだな、って改めて思ったよ」
 見下ろすアメジストの瞳が優しく笑ってイザークの表情も緩くなる。
「何を今さら・・・」
 当然だ、とばかりに見上げるアイスブルーにディアッカは笑う。
「だよなー、ホント、何年恋人やってんだろ、オレ」
 ぼそり、とつぶやかれた言葉にイザークは過剰に反応した。
「恋人って! お前、勝手なこと言ってんな!」
 じたばた、と腕の中で暴れるイザークにディアッカは余裕の表情でその体を抱きしめる。
「恋人じゃなかったら、彼氏とか?」
「同じことだろう! ばかやろうっ」
 腕力では敵わないイザークはそれでも無駄な抵抗を続けている。
「つまんないなー、イザークは」
 言ってディアッカはイザークの頬にキスをした。
「・・・っ」
「ねぇ、今日一日触れなかった分、いっぱいイザーク愛したいんだけど・・・?」
 伺うように見下ろせば、真っ赤な顔をしたイザークがいた。
「・・・恋人発言を撤回すれば、許してやる」
 突き出すように顎を上げてそう言ったイザークはまだ赤い顔で、けれども挑むように笑っていて。
 なんだか自分の好きなイザークそのまんまだな、と小さく苦笑したディアッカは、
「わかりました、撤回しますよ・・・っと」
 というと同時に勢いよくイザークの体を抱き上げた。
「うわっ」
「その代わり、姫って呼んじゃおうかなー」
 楽しそうに笑うディアッカにイザークは拳を叩きつけて抵抗する。
「こら、ばか! それもダメだ!」
「そんなこと言ってられるのも今のうちだよ、イザーク?」
 覗き込む瞳にイザークの呼吸は一瞬止まり、そしてディアッカのキスが舞い降りる。
「大好きだよ、イザーク」
「・・・今さらだって言っただろ!」
 言ってイザークの腕がディアッカの首に回り、やがて・・・・・・二人の影がゆっくりと重なった。



END


2005/8/22




あとがき

無理やり完成させた話。
8割できて放置してあったのを引っ張り出しました。
だらだらイチャイチャなだけです・・・;