「お前はずるい」
 自分が情けなくて悔しくて、そして少しだけ嬉しくて、イザークはディアッカを睨んだ。
「えぇー、何がだよ?」
 けが人に向かって酷いなーと言いながらそれでもディアッカは嬉しそうだ。
「何かしてほしいことがあったら聞いてやるぞ」
 ようやく起き上がって手近なイスに座りながらイザークは聞いた。
「してほしいこと? んー、キスとか?」
 あっけらかん、と言うディアッカに少しだけムッとした顔をしてイザークは黙る。
「なーんてな、冗談だよ、冗談っ」
 はははは、と笑っていたディアッカの目の前にイザークの顔が迫って、言葉を発する間もなくイザークの唇が押し当てられた。間近に鈍い銀の睫毛が伏せられている。動くことのできないディアッカの代わりにイザークは身を乗り出してその両腕でけが人の肩を押さえつける。一瞬驚いたディアッカはすぐに眼を閉じてイザークの首に両手を回すと引き寄せて、深く、キスを返す。
「イザーク・・・」
 余韻に浸っているかのような表情の恋人にディアッカは頬に手を添えて呼びかけた。
「・・・ここまでだからな。これ以上は無理だぞ」
 先を読んだような言葉に参ったなぁと笑いながら、ディアッカはイザークを抱き寄せる。
「ここ、隣に座ってよ。イザークを抱きしめたいから」
 ベッドの端をあけるようにしながら強請られて、イザークはそのまま開いた場所に腰掛ける。
「ブーツも脱いで、ちゃんと隣に来てよ」
 言われるままブーツを脱ぐと持ち上げられたフトンに滑り込むようにしてイザークはディアッカに抱きしめられた。
「んー、やっぱりイザ抱きしめながら寝たい・・・」
 一人は味気ないし寂しいからなー。そうつぶやくディアッカにイザークは頭を預けるようにしながら言った。
「俺は抱き枕か」
「枕なわけないでしょ。イザークは大事な恋人だよ」
 くすくす笑いながらディアッカは耳元でささやく。
「・・・毎日なんて無理だからな」
「え?」
 ぼそり、といわれた言葉に意味を取りかねてディアッカは聞き返した。
「毎日来るのなんて無理だ、って言ったんだ」
「イザ・・・」
「暇なときにくらいは来てやる・・・」
 その言葉にぎゅっとイザークを抱きしめたディアッカは嬉しさに頬にキスを浴びせるようにする。
「ば、ばか。俺はお前と違って暇じゃないからな。そんなにしょっちゅう来られるわけじゃないぞ」
「うん、それでも来てくれるだけで嬉しい」
 ニコニコとしているディアッカにイザークは小さく息をつくと、自分から腕を回して抱きついた。
「寂しいのは・・・お前だけじゃないんだからな・・・」
 そうして、二人はベッドの中でしばらく抱きしめあっていた。

 そんなイザークが門限に間に合うはずもなく、ニコルとアスランに借りができるのはまた別の話----------。





End



2005/10/6



あとがき。

無理やり発掘した話につなげた形で完結させました。
前半を書いていたのは半年以上前・・・;
お題「泣いてるイザーク」のつもりで書いてました。
だから後半とは微妙に文章が違うと思うのですが、その辺はまぁ、お目こぼしを。